生ける人形   1929年(昭和4年)     邦画名作選
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瀬木大助(小杉勇)は、東京で出世することを目標に、田舎から上京してきた。

彼は、先輩の青原代議士の紹介で丸ビルにある繁本興信所に勤める。

業務は、政財界の醜聞を調査し、ゆすりに近い手口で金を巻き上げることだった。


ある日瀬木は、玉屋銀行の青原代議士への不正献金を探り当てる。

代議士の恩義を踏みにじり、銀行乗っ取り策を、繁本社長に進言するのだった。

また彼は、タイピスト嬢の組川弘子(入江たか子)と知り合いデートに誘う。


だが、神宮球場で野球観戦をした後、彼女をホテルに誘って見事に振られてしまう。

さらに玉屋銀行の乗っ取りも、肝心の繁本社長に裏切られて失敗した。

会社を解雇され、何もかも失った瀬木は、メーデーの群集を眺めながら思案に暮れるのだった。




1928年「朝日新聞」に連載された片岡鉄兵の同名小説を内田吐夢が映画化。


瀬木大助という成上り者が、政財界を巧みに泳ぎ廻って立身出世を図ろうとするのだが、
結局、代議士の圧力によって失脚してしまうという物語である。

本作は、資本主義社会の内幕を描いて、社会諷刺のきいた「傾向映画」と呼ばれている。


主人公の瀬木大助は、美男子でも、ヒーローでもなく、むさ苦しい田舎者で、おまけに
野心的な小悪党でもある。

これまでの日本映画には見られなかった青年像だが、そんな瀬木役を小杉勇が生き生きと
エネルギッシュに演じて好評を博した。


また入江たか子は、ファッション雑誌から抜け出たような一分のすきもない着こなしで
モダンガールを演じ、その美貌ぶりを一段と印象付けた。


 
 
 
 

  製作   日活

  監督   内田吐夢  原作 片岡鉄兵

  配役    瀬木大助 小杉勇 繁本社長 三桝豊
      組川弘子 入江たか子 唐津屋万平 香川良介
      梨枝子 築地浪子 青原代議士 高木永二

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