稲妻    1952年 (昭和27年)              邦画名作選

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バスガールとして働く清子(高峰秀子)には、二人の姉と一人の兄がいた。

この四人兄妹は、なんとすべて父親が異なっていた。

ある日、一番上の姉が清子に縁談話を持ちかける。

だが縁談に金銭がらみのにおいを感じて、清子は気乗りがしなかった…。




戦前(昭和11年)に発表された林芙美子の同名小説を、成瀬巳喜男が映画化。

昭和10年代、バスガールは、当時の若い女性が憧れた花形職業だった。

求人広告には、女学校卒で容姿端麗であることが採用条件として謳われていたという。


女学校出のバスガールという職業婦人でもあったヒロイン・清子(高峰秀子)は、
新しい時代を生きる、新しい女性としての違和感を常に抱いていた。

都合四人もの男と結婚した母、そして、それぞれ父親の異なる姉たちの日常からも、
結婚=女の幸せには、到底希望を見出せないのだった。


市井の人々の喜怒哀楽を描くという点で、成瀬の作風は小津安二郎とよく比較される。

だが成瀬は、一貫して自立した女性の逞しさをその主題に置く点で、小津と異なる。


劇中で、末娘を演じる高峰秀子が、母親役の浦辺粂子に「おかあちゃん、四人もの人と
結婚したんでしょう。幸福だった、それで」と、なじるように問いかける場面がある。

母親は照れたように微笑み「幸福なんて、お前、そんなハイカラなこと」と、答える。


恐らく波乱万丈の人生であっただろう母親の言葉の中に、目の前にある現実と向き合い、
理屈など抜きに、精一杯生き抜いてきた女性の強さと逞しさが伺えるのである。


末娘は、こんな男運の悪い母親のような境遇にはなりたくないと思いながらも、やはり
そんな母親にしみじみと骨肉の愛を感じ、もう愚痴を言うのはよそう、と思うのだった。







  製作  大映

  監督  成瀬巳喜男   原作   林芙美子

  配役   清子 高峰秀子   嘉助 丸山修         綱吉    小沢栄 
      光子 三浦光子   おせい 浦辺粂子         国宗周三   根上淳 
      縫子 村田知英子   杉山とめ 滝花久子         つぼみ    香川京子 

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