犬神家の一族   1976年 (昭和51年)     邦画名作選
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信州財界の巨頭、犬神佐兵衛は、奇妙な遺言書を残して没した。

全財産を恩人の孫に譲る。ただし、佐兵衛の3人の孫の一人と結婚しなければならない、というのだ。

遺産を巡り、肉親でありながら激しく憎しみ合う犬神家の人々。やがて惨劇の幕が上がる…。



横溝正史といえば、おどろおどろの連続殺人事件だが、謎を解き明かす名探偵・金田一耕助を、
見るからに頼りない優男の石坂浩二が演じている。

このとぼけた人の好さそうな石坂・金田一が、ぼさぼさ頭をかきながら推理を巡らすのである。


だがこの探偵は、犬神家の周辺をうろうろするものの、決して次々と起こる殺人事件を事前に
阻止したりはしない。すべての殺人が完了してから、おもむろに真相を説明するだけである。


石坂は、キネマ旬報の誌上で「金田一はギリシア悲劇におけるコロスである」と解説している。

コロスとは、芝居の案内役、いわば狂言回しであり、犯罪を未然に防ぐことはできない。
ただ不可解な事件の謎を観客に解き明かすことが彼の役割なのである。


まさにこの「誰も救えない」名探偵は、シリーズでは毎回自己嫌悪に陥ってしまうのが常である。
しかし彼は、真犯人を追い詰めるのではなく、常に犯人の身になって同情し自白に向かわせる。


おぞましく非日常的な物語の中に、金田一耕助という若々しいインテリ風の探偵が飛び込んでくる。
この探偵のひょうひょうとしたクールな知性が、やりきれないはずの物語を爽やかなものにしている。

この事件解決後の爽やかな余韻こそが、横溝シリーズの魅力のひとつとなっているのではないだろうか。



  製作  東宝

  監督  市川崑  原作 横溝正史

  配役    金田一耕助    石坂浩二        犬神竹子    三条美紀        野々宮珠世    島田陽子 
      犬神佐兵衛    三国連太郎        犬神梅子    草笛光子        女中はる    坂口良子 
      犬神松子    高峰三枝子        犬神佐清    あおい輝彦      橘警察署長    加藤武 

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