一殺多生剣(いっせつたしょうけん)  1929年(昭和4年)   邦画名作選

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時は1868年(慶応4年)まさに明治の世を迎えんとする世情騒然たる時代。

錦旗を奉じた官軍の力は強く、徳川幕府を擁護する幕臣たちは圧倒されていた。
官軍兵士は江戸の街で、略奪や強姦など乱暴狼藉を働き、江戸の庶民を苦しめる。

旧幕府の旗本・緒形十兵衛は、庶民が平和に生きる道の具現を願って立ち上がる。

一方、官軍の将軍・佐分利玄馬は、十兵衛の熱き心意気に感銘を受ける。
だが、敵対する立場上、涙を飲んで、彼を討ち果たせねばならなかった。



横暴の限りを尽くす官軍を相手に、孤独な闘いを挑む旗本を描いた伊藤大輔絶頂期の一本。

幕末の旗本・十兵衛は、錦旗をかさに庶民を苦しめる官軍に抵抗するが、最後に銃弾を浴び、
「新しい世が明ける」と叫び倒れる。本作は、官軍が重要人物を抹殺する不条理を描いている。


戦前には、当局の映画検閲があり、気に入らないシーンなどは、容赦なくカットされた。
この検閲の好餌となったのが、体制批判的な内容を扱った傾向映画であった。

本作「一殺多生剣」もその一つで、主人公の緒方十兵衛が官軍兵士を斬りまくるという
部分などが大幅な削除を受けている。

またその後の欠落部分も多く、現存版は30分程度であるが、緒形十兵衛を演じる右太衛門の
体当たりの熱演は圧巻であり、迫力ある殺陣を見事に演じ、物語に重厚感を与えている。




 

 
 製作  右太衛門プロ   配給 松竹キネマ

  監督  伊藤大輔

  配役   緒形十兵衛 市川右太衛門 乾源十郎 金子弘
      髪結職人・米吉 市川右太衛門 おすず 泉春子
      佐分利玄馬    高堂国典              左近圭之助    沢村勇 

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