磯の源太 抱寝の長脇差(だきねのながどす)  1932年(昭和7年)   邦画名作選

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磯の源太(嵐寛寿郎)は、一宿一飯の義理から、宮久保一家との喧嘩出入りに加わる。

料亭杉戸屋の娘・お露(松浦築枝)は、矢切一家の客分となった幼馴染の源太と再会し、
思いを募らせるのだった。


一方、そのお露には、矢切一家の若衆・勘太郎(市川寿三郎)が惚れ込んでいる。

勘太郎の気持ちを察した源太は、勘太郎に堅気になってお露と一緒になれと言い残し、
単身宮久保一家に殴り込みをかけようとする。


だが、源太の動きを察知した勘太郎は、先回りして宮久保一家に向かう。

源太の駆けつけた時は遅く、勘太郎は、宮久保一家の手にかかり瀕死の状態だった。

大乱闘の末、宮久保一家を討ち果たした源太は、お露に勘太郎の手を握らせてやるのだった。



脚本家として既に名を成していた山中貞雄の監督デビュー作。山中は、弱冠22歳であった。

長谷川伸の股旅小説「源太時雨」を自ら脚色、小気味良い字幕表現と斬新な演出が高く評価され、
当時の批評家から「旅人渡世の義理人情の細やかさが見事に描き出されている」と絶賛された。


なお本作は、1分弱ほどの短い映像であるが、ラストの迫力ある剣戟シーンが現存している。

山中貞雄といえば、人情時代劇に秀でた監督という定評があるのだが、それは後年のことであり、
初期の頃は、壮絶な剣戟シーンの手腕が惜しみなく発揮されていたことが伺えるのである。



 


  製作  嵐寛プロ   配給 新興キネマ

  監督  山中貞雄   原作 長谷川伸

  配役    磯の源太    嵐寛寿郎        お霜 松浦築枝
      矢切の伝右衛門 玉島愛造 宮久保長次郎 今成平九郎
      勘太郎 市川寿三郎 小田切定一郎 頭山桂之介

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