けったいな人びと 1973年(昭和48年) ドラマ傑作選


大阪・西横堀の海産物問屋、大槌商店は、三代続いた老舗である。
当主の平太郎(西山嘉孝)は、家業に精を出さず、自分ですることと言えば、
ヒゲの手入れと、箸を持つことくらい。
この大槌家も、昭和四年の大不況の波を受けて、ついに倒産。
長女のたか子(八千草薫)は、美容師となって一家を支えていくが、
ムコさんが二人までも病死と、夫(おとこ)運が悪い。
残る四人の兄妹は、それぞれ勝手気ままな人生を歩みはじめるが、こんな五人の
子供を持った母・ふさ(高森和子)の心労は、いつまでも絶えることがない。
昭和前半の大阪庶民の哀歓を描いたドラマで、脚本家・茂木草介の半自伝的な作品。
大槌家の当主というのは、商売はすっかり番頭まかせ、毎日アゴの下のヒゲの
手入ればかりしているような人物として描かれる。
こうした人物は、もうかりまっかの大阪にはそぐわない。
ど根性が尊敬されるというような伝統にも合わない。
だからこそ、けったいな人物として、ドラマになったのだろう。
実際、商売の中心といわれる船場でも、戦争前までは、こんな人物が珍しくなかったようだ。
そんな変わり者の大旦那が西山嘉孝、しっかり者の奥方が高森和子、長女が八千草薫、
長男が藤田まこと、次男が笑福亭仁鶴と、関西らしい芸達者な面々が顔を揃えている。
面白いことに、母親役の高森和子(41)は、実は、娘役の八千草薫(42)より年下だ。
高森は巧みな老け役で、同年の日本放送作家協会女優賞を受賞している。
なお、素顔の彼女は、色白で鼻筋の通った可愛い美人である。
与一郎(藤田まこと)は、長男だが家業を継ぐ気は全くない。
劇作家を志して舞台役者も経験したが、途中で挫折してしまう。
そこで心機一転、地道に商売しようと、小さなうどん屋を開業する。
女中のおいま(林美智子)は、うどん屋の経験があり、店の開店に力を貸す。
やがて彼女は、与一郎の女房におさまるのだった。
うたい文句が「安くてうまい」おまけに店主が人情に厚いため、店はあまり儲からない。
不況の折から、一杯のうどんを注文して、子供に食べさせる貧しい母親を見た与一郎が
「もう一杯おまけや」と言って出してやる始末なのだ。
劇中、何気ない日常のところどころに感動が描き込まれている。
そこに人間と生活が息づいている限り、共感が湧いてくるのだ。
(制作)NHK(脚本)茂木草介
(配役)大槌平太郎(西山嘉孝)大槌ふさ(高森和子)大槌たか子(八千草薫)大槌与一郎(藤田まこと)
大槌房吉(笑福亭仁鶴)大槌はな枝(武原英子)大槌みつ子(岡田由紀子)おいま(林美智子)勝部(佐藤慶)
