絹代物語 1930年(昭和5年) 邦画名作選 |
絹代は、ある温泉町の芸者である。
この温泉にある日、一人の年老いた紳士(藤野秀夫)がやって来る。
老紳士は、絹代を招いて、何でも欲しい物を遠慮なく言えと言う。
彼女は、今しがた知り合った旅芸人(新井淳)の夫婦を呼んでくれと言う。
絹代は、この貧しい夫婦が、何だか自分の親のように思えてならなかった。
お座敷で彼女は、その旅芸人たちと踊る。老紳士は、涙ぐみながらこの光景を見ていた。
1927年「恥ずかしい夢」に続く、五所平之助による田中絹代主演の花柳もの。
絹代自身をモデルにしたのではなく、ある芸者の物語である。巽来三郎(高田保)の原作を、
野田高梧が絹代のために脚色、彼女の可憐な味を活かした当たり役に仕立てた。
翌日、その老紳士は絹代の家を訪ねた。彼こそ絹代の実の父親だった。
父親は過去の事情を詫び、彼女に帰るように頼んだが、絹代は温泉町の一芸者として
自立して働く今の生活を誇りに思い、実の父の申し出を断るのだった。
本作は、人気上昇中の女優の名を題名に、ファンの心理をくすぐる商魂が見えみえだったが、
おかげで絹代ファンが一挙に倍増し、文字通り彼女の出世作となった。
製作 松竹
監督 五所平之助 原作 巽来三郎
配役 | 絹代 | 田中絹代 | 女将 | 吉川満子 | |||||||||
老紳士 | 藤野秀夫 | 鈴香 | 花岡菊子 | ||||||||||
旅芸人 | 新井淳 | 鈴香の弟 | 青木富夫(突貫小僧) | ||||||||||
その女房 | 鈴木歌子 |