心   1980年(昭和55年)       ドラマ傑作選

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一村平(宇津井健)は、親の稼業をついで、神楽坂のとんかつ屋「一村」の調理場を預かっている。

彼は早くに両親を失い、店主である姉の糸(山岡久乃)と共に、年の離れた妹弟二人を育ててきた。


そんな40歳を過ぎて独身の平に嫁が来ることとなり、晴れて結納の日を迎えることになった。

平は姉がまとめてくれたこの縁談を承知しているが、何となく気乗りがしない。


一方、小料理屋の跡取り娘で、平の幼なじみである佐和(大空真弓)は心中穏やかでなかった。



神楽坂のとんかつ屋を舞台に、一つ屋根の下に暮らす四人の兄弟姉妹愛を描くホームドラマ。




平(宇津井)は、小料理屋の佐和(大空)と、実は好きあっているのだが、二人とも店の跡継ぎということで、
結婚に踏み切れないでいた。


そんな折、姉の糸(山岡)は、嫁の来てがいない平を不憫に思い、あちらこちら探し回った。

平のほうも、母親代わりとなって育ててくれた姉が、青春時代を犠牲にしてしまった事を申し訳なく思い、
姉がようやく見つけてきた縁談を承諾したのだった。



「渡る世間は鬼ばかり」(1990年)では、山岡久乃と長山藍子は親子だが、本作では姉妹となっている。
昭和のドラマでは、しばしば年の離れた兄弟姉妹が登場する。


これは戦前の大不況や戦時の苦しい時期で、子供をもうける余裕さえなかったという当時の視聴者には
直ぐに察せられる事情があったためである。



ホームドラマは、長らく女性を主人公とした作品が続いたのだが、70年代後半から、寺内貫太郎や池中玄太
といった男性主導型ドラマが高視聴率を記録し、ホームドラマの世界は、父権復活のきざしが見えはじめた。


そのきっかけとなった俳優が宇津井健であった。アクション・スターであった彼が、にんじんの詩(1972年)
たんぽぽ(1973年)赤いシリーズ(1974年)など、数々のホームドラマに主演するようになった。


そして誠実で真面目な中年男性役へと役柄のイメージを拡げるとともに、従来の母親中心のホームドラマから、
頼れる理想の父親像を描くホームドラマへの世代交替に大いに貢献したのである。



(制作)TBS、テレパック(原作)(脚本)橋田寿賀子

(主題歌)佐良直美「心」(作詞:荒木とよひさ、作曲:鈴木キサブロー)

(配役)長男・一村平(いちむらまさる)(宇津井健)長女・一村糸(山岡久乃)次女・一村友(長山藍子)次男・一村寛(かん)(篠田三郎)

沢木佐和(大空真弓)沢木喜和(赤木春恵)沢木三和(沢田雅美)峯子(松原智恵子)長谷川志津(山田五十鈴)若林哲子(杉田かおる)


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