黒の奔流   1972年(昭和47年)     邦画名作選
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弁護士の矢野(山崎努)は、殺人容疑をかけられた女性・藤江(岡田茉莉子)の弁護を担当する。


弁護は難行したが、矢野が見事、無罪判決を勝ち取ったことで、二人は「男女」の関係になる。

矢野は一躍、若手敏腕弁護士と評価され、大物弁護士の娘(松坂慶子)との婚約も決まる。


だが、順風満帆の未来が間近となった矢野にとって、藤江が邪魔な存在となった。

頑として別れを受け入れない藤江に対して、矢野はやがて殺意を抱くようになる…。





松本清張原作。裁判で無罪に導いた女性に翻弄される弁護士の姿を描く、緊張感に満ちた心理サスペンス。


物語の前半は、知的な役柄がぴったりはまる山崎努演じる主人公・矢野弁護士。

法廷シーンでの演技は、力がみなぎり、迫力十分だ。


だが無罪を勝ち取り、名声を手にした後の弁護士が、貪欲な野心家としての本性を露わにするなど、

その落差を、巧みに演じ分けていることも印象深い。

一方、岡田茉莉子演じる藤江の、一途な女の情念の深さが、非常に際立っていて怖いくらいだ。


人間の心の闇を切り取るのが、清張文学の特徴の一つだが、その精神は今作にも息づいている。

「好きな人を独占したい」など、誰もが持つ想いを根幹に置くから「自分もそうかも」と引き込まれる。

人間の運命のはかなさや、誠実に生きることの大切さを思い知らされる。

 
 
 製作   松竹

  監督   渡辺祐介  原作  松本清張

  配役    矢野武 山崎努 若宮正道 松村達雄
      貝塚藤江 岡田茉莉子 若宮早苗 福田妙子
      岡橋由基子 谷口香 若宮朋子 松坂慶子
      倉石検事 佐藤慶 北川大造 中村伸郎

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