巨人伝   1938年(昭和13年)     邦画名作選
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明治維新の頃、市長で慈善家の大沼(大河内伝次郎)は、火事場で老人を助ける。

だが、大沼が太い鉄棒を、いとも簡単に捻じ曲げ、老人を救出するのを見た刑事の
曽我部(丸山定夫)は、疑念を抱く。

かつて「万力の三平」と呼ばれ、脱獄した過去のある犯罪者ではないかと睨んだのだ。

やがて別の男が誤認逮捕され、冤罪を防ぐために、大沼は自ら出頭して自首する。

だが、逮捕された大沼が乗った船は、護送中に難破してしまう。

生き延びた大沼は、強欲な家で虐げられている少女・千代(原節子)を引きとる。

だが、再び曽我部に居場所を知られてしまい、千代と共に姿を消す。



ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」を伊丹万作監督がリメイクして映画化。

脱獄囚の三平は、逃亡中に寺の住職に諭されて改心し、数年後には市長にまで出世する。

だが自分と間違えられて逮捕された男がいると聞き、市長の職を投げ打ち自ら名乗り出る。

それは彼にとって第二の苦難の人生の始まりであった。


丹下左膳など時代劇のイメージが強い大河内伝次郎だが、本作では珍しく現代劇に挑戦。

劇中、脱獄囚と市長の二役を見事に演じ分け、堂々とした貫禄を示している。

また原作のコゼットに当たる千代に扮した原節子は、レース飾りの帽子と洋装で登場して
華やかさをふり撒いている。

当時18歳の原は可憐であり、純潔な恥じらいの表現が忘れがたい印象を残している。



 
 
 製作   東宝

  監督   伊丹万作

  配役    三平/大沼 大河内伝次郎 お筆 英百合子
      千代 原節子 鳴門屋 小杉義男
      曽我部弥次郎 丸山定夫 お仙 清川虹子
      和尚 汐見洋 清家竜馬 佐山亮

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