球形の荒野 1981年(昭和56年) ドラマ傑作選
野上久美子(島田陽子)は、ひとり大和路を旅していた。
そこは、終戦前に欧州の任地で戦死した父が、こよなく愛した土地だった。
彼女は、亡父・野上顕一郎(三船敏郎)に、婚約の報告にやってきたのだ。
ところが、ある寺院の拝観者芳名帳を見て、久美子は驚愕する。
そこには、亡父そっくりの筆跡の署名が記されてあった。
そして別の寺でも同じ筆跡を見つけた久美子は、婚約者の添田(中村雅俊)に伝える。
その翌日、二人は、再びその筆跡を確かめるために、昨日まわった寺を訪れる。
だが、何故か芳名帳には、署名があったページだけが破かれていたのだった。
野上顕一郎は生きているかもしれない…添田は野上の過去の人間関係を調べはじめる。
1960年「オール読物」に連載された松本清張の同名推理小説のドラマ化。
ヒロイン野上久美子が古寺の芳名帳で見た独特の筆跡。
それは大戦末期の欧州で亡くなった外交官の父の筆跡そのものだった。
身内の誰もが取り合わない中、彼女の恋人・添田彰一は、ある疑念を抱く。
調査を進めるものの、口を閉ざす関係者。
その後、久美子の周辺で、不可解な殺人事件が立て続けに起こる。
火曜サスペンス劇場の第一作。主に40歳代から50歳代の主婦層を視聴者に絞り、
豪華キャスト、一流のスタッフによる重厚な作品を目指したシリーズである。
とりわけ本作は、原作者の松本清張までが特別出演する力の入れようであった。
また番組のイメージに合わせた独自の主題歌を作り、毎回番組の最後にオンエア
することにした。
完成した曲は、岩崎宏美が歌う「聖母(マドンナ)たちのララバイ」である。
ドラマは、殺人と言う重いテーマを扱っているが、この曲が流れることで、
生命の尊さ、人間愛の美しさに転化する、それが狙いであった。
その後、視聴者からの大反響があり、急きょ岩崎宏美のシングルとしてレコード化。
発売後たちまちチャート1位を獲得し、70万枚以上の大ヒットを記録。
もちろん、ヒットとともに番組の視聴率も上昇し、年間視聴率22%を叩き出した。
(制作)日本テレビ(NTV)三船プロ(原作)松本清張(脚本)石松愛弘
(配役)野上久美子(島田陽子)野上顕一郎(三船敏郎)野上孝子(香川京子)添田彰一(中村雅俊)
松村忠介(西村晃)筒井(柳生博)笹島恭三(内田稔)滝良精(池部良)
聖母(マドンナ)たちのララバイ (岩崎宏美)