宮本武蔵 1970年(昭和45年) ドラマ傑作選
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一旗あげようと関ヶ原の合戦に、西軍として参加した武蔵(高橋幸治)
だが西軍は負けてしまい、徳川方に捕われるが沢庵和尚(松村達雄)に救われる。
武蔵の身柄を預かった沢庵は、まだ反抗心を失わない彼を千年杉の枝に吊し上げる。
殺せと怒鳴る武蔵に、沢庵は「強いだけが武士ではない、恐怖を知るのが
真の人間だ」とさとすが、武蔵には通じない。
しかし明日、首をはねてやると沢庵から宣告されると、さすがの武蔵も
急に恐ろしくなり、助けてくれと叫ぶが、沢庵はつめたく突き放す。
なわを斬って、武蔵を助けたのは、幼なじみのお通(梓英子)だった。
助けを求める武蔵の声に、お通はあわれみ以上のものを感じたのであった。
1935年(昭和10年)朝日新聞に連載された吉川英治の同名小説のドラマ化。
根強い人気の原作だけに、これまで映画やドラマで、様々な役者が武蔵を演じた。
だが吉川英治氏の未亡人から「原作の精神が生かされることが少なく失望している」
との指摘があった。
これを受けて「原作に忠実に、吉川武蔵の決定版を目指す」という方針のもとに
制作されたのが、NET版(後のテレビ朝日)の本作である。
序盤で登場する武蔵は、赤茶けた髪を荒縄でくくり、麻袋のような荒い布目の
着物に、泥だらけの袴、といった浪人スタイル。
そんな泥臭く野性的だった武蔵が、禅僧・沢庵の教導により、一人の人間として
知性に目覚めていく姿が重点的に描かれている。
やがて武蔵は、剣の道に生きる志を立て、名乗りを宮本武蔵と改め、剣禅一如を
目指して、武者修行の旅に向かう。
主演の高橋幸治が、野獣のように暴れまくる武蔵(たけぞう)と、修業を積み、
見違えるような人物となった宮本武蔵とを、見事に演じ分けている。
また松村達雄が、若き日の武蔵に人間の道を説き、学問をすすめる沢庵和尚を
独特の味わいで好演している。
(制作)NET、東映(原作)吉川英治(脚本)八住利雄
(配役)宮本武蔵(高橋幸治)佐々木小次郎(山崎努)お通(梓英子)又八(岸田森)
沢庵和尚(松村達雄)お甲(渡辺美佐子)朱美(加賀まり子)お杉婆さん(三益愛子)
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