| 右門捕物帖 三十番手柄 帯解け仏法 1932年(昭和7年) 邦画名作選 |
生島屋の娘・お類(泉清子)と手代の伊吉は、将来を契った仲だった。
伊吉には、おふみ(山路ふみ子)という美人の妹がいる。
生島屋の主人(玉島愛造)は、年甲斐もなく、娘と伊吉の結婚を認める代わりに
伊吉の妹を後妻にと条件を出す。
だが、おふみが密かに想いを寄せるのは、二枚目同心・むっつり右門だった。
一方、岡っ引きの伝六もおふみに「ホ」の字だった。
さて、江戸庶民の間で「帯解け仏法」という宗教が流行っていた。この仏法を信じ、
五両の寄進をすると、必ず想う人と添い遂げることが出来るという。
お類もおふみも、信者たちに誘われて行こうとするのだが、むっつり右門は
どうもインチキ臭いと、伝六と共に捜査に乗り出す…。
淫蕩なる怪宗教を検挙せんと活躍するむっつり右門の捕物奇譚。
見事このインチキ宗教を亡ぼして、右門と伝六、そしておふみの三人は
帰り旅となった。
伝六が「おふみさん、右門の旦那とあっしと、どっちが好きなんです?」
「そうね、この笠を飛ばして表に出れば右門様、裏に出れば伝六さんよ」
おふみが笠を投げた瞬間、右門は空中の笠を一刀両断真っ二つ。
二つの笠は一つは表、一つは裏と出る。三人の高笑いがこだまして幕。
山中貞雄はこの時期、右門捕物帖のシナリオ作家として活躍していたが、
本作は、監督として初の演出を担当した。
斬新な試みとして、若い男女のカップルが絡む場面など、エロチシズムを
そそるシーンを撮ったのだが、検閲ですべて削除されてしまった。
それでも映画は好評を博し、興行成績も良好であった。
ヒロインの山路ふみ子は、前作「口笛を吹く武士」で嵐寛に気に入られ、
引き続き本作にも応援出演。茶目っ気豊かで、おきゃんな娘を好演している。
製作 嵐寛プロ 配給 新興キネマ
監督 山中貞雄 原作 佐々木味津三
| 配役 | むっつり右門 | 嵐寛寿郎 | 生島屋太郎左衛門 | 玉島愛造 | |||||||||
| おしゃべり伝六 | 頭山桂之助 | 生島屋の娘・お類 | 泉清子 | ||||||||||
| おふみ | 山路ふみ子 | あばたの敬四郎 | 尾上紋弥 | ||||||||||
| 兄・伊吉 | 市川寿三郎 | 敬四郎女房・お兼 | 別府花子 |