佐々木小次郎 1957年(昭和32年) 邦画名作選 |
小太刀の名人に養育された孤児、佐々木小次郎は、故郷・越前で暮らす中で名家の恋人を得る。
だが剣客として名を挙げてから妻に迎えようと、一剣に野望を賭け、恋人と別れ、故郷を捨てる。
やがて、出雲のお国の舞い姿に啓示を得た無心の剣は、一閃、乱舞する飛燕二羽を斬り落とす。
舞の中から、秘剣・つばめ返しを編み出した小次郎は、やがて道場「巌流」を創始するに至る。
だが小次郎の名声を耳にして、凄腕の人物が挑んできた。宮本武蔵である。
朝日新聞に連載された村上元三の同名小説を、結束信二が脚色、佐伯清が監督した前後篇二部作。
映画の冒頭で、小次郎は、名家の娘と駆落ちする。
孤児であった小次郎にとっては、身分違いの恋であり、その仲は許されるはずもなかった。
やがて追っ手に追いつかれ、二人は離れ離れになってしまう。
ここから、小次郎の放浪の旅がはじまる。
武家社会では、けっきょく家柄がものをいう。捨て子の小次郎では、誰も相手にしてくれない。
好きな女性と、添い遂げることさえできないのだった。
この武家社会への反発が、小次郎を剣の道へと向かわせる。
求道の剣を求めようとした武蔵に対し、小次郎の剣は、あくまでも名を挙げるための手段であった。
だが出生の不幸を引きずり、剣以外に何一つ頼れるものを持たぬ小次郎は、悲劇の剣士でもあった。
千代之介の佐々木小次郎は、前髪に陣羽織、涼しい顔立ちの美剣士として演じられており、
宮本武蔵(千恵蔵)の泥臭い無骨な剣豪のイメージとは真逆のタイプとして描かれている。
二人の決闘の日時は、江戸初期の「二天記」によると、慶長17年(1612年)4月13日であり、
当時の小次郎の年齢は十八歳、武蔵は二十九歳であったと記されている。
また決闘の舞台となった船島(下関市)は、後に「巌流島」と敗者の名がつけられている。
これは、若くして無念の死を遂げた小次郎への鎮魂の意が込められているのかもしれない。
製作 東映
監督 佐伯清 原作 村上元三
配役 | 佐々木小次郎 | 東千代之介 | とね | 千原しのぶ | 奈美 | 三条美紀 | ||||||||||||||
伊之瀬東馬 | 徳大寺伸 | まん | 大川恵子 | 小里 | 浦里はるみ | |||||||||||||||
島兵衛 | 原健策 | 出雲のお国 | 花柳小菊 | 宮本武蔵 | 片岡千恵蔵 |