船頭可愛いや   1935年(昭和10年)     邦画名作選
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若い漁師・豊作(上原謙)は、声もよく唄も上手かった。

彼の唄声に聞き耳を立てるのは、渡守の娘・お春(桑野通子)だった。

やがて二人は、将来一緒になることを誓い合った。

だがある日、豊作は漁に出かけたきり、戻って来なかった。

それでもお春は、必ず帰ってくると信じて待ち続けるのだった。



本作「船頭可愛いや」はもともと流行歌(作曲:古関裕而)であり、この映画は
それを主題歌として劇中に登場させるために制作されたものである。


ヒロインお春の歌う「船頭可愛いや」の唄が川面に流れて、映画は幕となるのだが、
封切初日の浅草帝国館では、このシーンで観客の拍手が湧きおこり、好評を博した。


なお「船頭可愛いや」の「可愛い」は、漁に出かけて戻らない漁師を恋い慕う
という「いとしい、恋しい」の意味で用いられている。



主演の上原謙は、立教大学を卒業したこの年に、松竹蒲田に入社。

入社早々、デビュー二年目の若手人気女優・桑野通子の相手役に抜擢された。

本作「船頭可愛いや」は、桑野とコンビを組んで二度目に主演した作品である。


二人の初々しく爽やかな恋愛模様が人気を呼び、主題歌の大ヒットも相まって、
映画は興行的に大成功を収めた。


 
 
 製作   松竹

  監督   宗本英男  原作 本間一

  配役    漁師・豊作 上原謙 村長 藤野秀夫
      渡守の娘・お春 桑野通子 健二 日守新一
      お春の妹・お絹    市村美津子        お光      水戸光子 
      お春の父    河村黎吉               

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