上海の女   1952年(昭和27年)     邦画名作選

直線上に配置


舞台は1945年(昭和20年)戦争末期の上海。

日本人憲兵の真鍋中尉は、ある夜、ナイトクラブで歌う歌姫・李莉莉と出会う。

彼女は日本人だが、幼くして両親を失い、中国政府要人の養父に育てられたという。
真鍋は、抗日勢力の動きを探るため、彼女に近づくが、いつしか恋心を抱くようになる。

真鍋は、愛情が深まるに従って、彼女を工作に利用するのが心苦しくなっていった。




稲垣浩監督、山口淑子、三国連太郎主演による戦時下の上海を舞台にした悲恋メロドラマである。


映画で、真鍋と李莉莉が喫茶店で語り合っているとき、店主が気を利かせて、彼女のヒット曲を流す。
すると、店に乱入して来た憲兵らが、その歌を抗日の歌として、店主を逮捕しようとする場面がある。

戦時中の上海は、日本軍の支配下におかれ、日本人は、安全を保障された居住地で快適に生活していた。
中国人とのトラブルが起きても、憲兵が現れるや、中国人たちはみな黙り込んでしまうのである。

たが日本の敗戦が濃厚になると、状況は一変する。日本人たちは、声をひそめて生活するようになり、
終戦とともに、命からがら引き揚げてくることになる。


映画は、真鍋と李莉莉の間に芽生えた恋を描いたラブロマンスに焦点が当てられているが、二人の運命が
軍国主義の犠牲となるに及んで、戦争の残酷さ、非人間性を強く訴える作品となっている。

また李莉莉を演じた山口淑子は、実際に中国要人の養女として育てられ、中国人歌手・李香蘭として生きた
前半生が、そのまま映画に描かれており、それが作品にリアリティと迫真性を加えている点が興味深い。



 
 
  製作  東宝

  監督  稲垣浩

  配役   李莉莉 山口淑子   丁士邨 二本柳寛 来島大佐 佐々木孝丸
      真鍋中尉 三国連太郎   丁の部下劉 加東大介 周永祥 今泉廉
      李克明    青山杉作          沈女史    沢村貞子          王秀蘭    荒木道子 

直線上に配置