白い影   1973年(昭和48年)       ドラマ傑作選

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直江庸介(田宮二郎)は、37才独身、東京の私立病院に勤務する外科医である。


彼はかつて大学病院で将来を嘱望された医師だったが、突如大学を去ってこの病院へやって来た。

なぜ大学をやめ、小さな私立病院で雇われ医師となったか不明だが、外科医としての腕は抜群だ。


あるとき、酔っ払って額を割ったやくざ・戸田(尾藤イサオ)が、救急車で運び込まれてきた。

当直の看護婦の知らせで、外出していた直江は帰ってきたが、かなり酒気を帯びていた。


直江は興奮してわめく患者をトイレに閉じ込め、心が静まるのを待つように命じた。
次に、やくざの仲間たちに入院費の保証金を入れるよう要求する。

手術は腕の立つ直江にかかると、素早く、手際よく進められた。


直江は手術を終えた看護婦たちに、寿司を頼んであるからと、さりげなく告げて去っていった。



謎の医師・直江と彼をめぐるさまざまな人間模様を、病院という閉鎖的な世界の中で描く傑作。


直江は「多発性骨髄炎」という不治の病にかかっており、痛み止めの麻薬が簡単に手に入る
街の私立病院へと移ってきたのだった。

彼は自分の命は残り少ないと知っており、自分からは周囲の人間に心を開くことをしなかった。


だが直江は、当直だろうが時間が空けばバーへ繰り出し、浴びるように酒を呑む。
それでも急患と連絡を受ければ、見事に手術を完璧にやってしまうのである。

そんな直江に、志村倫子(山本陽子)をはじめとする看護婦たちが、好意以上のものを
持つのも無理はなかった。


本作は、死を目前にした医師が人間として、残り少ない時間をどう生きるかといったシリアスな
テーマと共に、彼をとりまく女性たちとの人間模様が繊細なタッチで描かれる恋愛ドラマでもある。

田宮二郎が映画「白い巨塔」(1966年)に続き、二度目の外科医役をクールに演じた本作は、
最高視聴率25.7%、平均視聴率21.7%の高視聴率ドラマとなった。
   

 
(制作)TBS(原作)渡辺淳一(脚本)倉本聡

(配役)直江庸介(田宮二郎)志村倫子(山本陽子)高木亜紀子(中野良子)行田美樹子(中山麻理)
宇野かおる(竹下景子)小橋俊之(山本亘)行田律子(楠田薫)関口鶴代(佐々木すみ江)
川合友子(紅景子)田中みどり(大和撫子)立石(井川比佐志)



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