支那の夜   1940年 (昭和15年)       邦画名作選
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日本占領下の上海。

貨物船の乗組員である長谷は、夜の町で日本人にからまれている中国娘の桂蘭を助ける。

ところが桂蘭は、日本人には借りを作りたくないと長谷の家に押しかけ世話をしようとする。

長谷はそんな桂蘭に優しく接するが、実は桂蘭の家族はみな、日本軍の攻撃で死んでいたのだ。

いつしか長谷に惹かれる心と、家族の仇という感情に、桂蘭の心は揺れる…。



日中戦争のさなか、戦時下の上海を舞台に日本人男性と中国人女性の恋愛を描いた作品。


李香蘭という女優が、実は日本人であることは、軍の上層部と一部の映画関係者は
知っていた。だがこれは厳守すべき秘密であった。

なぜなら日本人女性が中国娘を演じては「国策映画」として成立しないからである。


生粋の中国娘が、日本の大スター・長谷川一夫とラブシーンを演じてこそ、この戦争は
侵略ではなく、親日派中国人を助けるための武力行使だという幻想が成り立つのだ。

本作は、甘い語り口の中に両国の「結びつき」を強調したプロパガンダ映画であった。


日本人の船員が中国娘に惚れられるという内容で、侵略したうえに被占領地の女性に
惚れられるという、まことに都合のよい当時の日本の男たちの夢をなぞったものだった。

日本人向けには良いとしても、東南アジアなどでも上映されたため、これを屈辱と感じる
中華圏の人々から多くの批判が生まれた。


のちに李香蘭自身、中国娘が心を改めるシーンが中国人の観客には屈辱的だったとして、
日経新聞の「私の履歴書」(2004年12月14日)の中で謝罪している。



 
 

  製作  東宝

  監督  伏水修

  配役 長谷哲夫 長谷川一夫 山下仙吉 藤原釜足
  桂蘭 李香蘭 三浦とし子 服部富子

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