それぞれの秋 1973年(昭和48年) ドラマ傑作選
大学生の新島稔(小倉一郎)は、平凡なサラリーマン家庭の次男坊である。
ある日、悪友の唐木(火野正平)にそそのかされ、電車の中で痴漢をしてしまう。
運の悪いことに、その痴漢した相手というのがスケバン(桃井かおり)だった。
しかも稔は、そのスケバンに一目ぼれされてしまい、大変なことになる。
彼女に捕まった稔は、不良グループの溜まり場に無理やり連れていかれる。
ところが、不良グループの中に、なんと妹の陽子(高沢順子)がいたのである。
長期ローンでマイホームを建てた五人家族のリアルな日常を描いたホームドラマ。
家族構成は、定年間際の父・清一(小林桂樹)、母・麗子(久我美子)、セールスマンの
兄・茂(林隆三)、弟・稔(小倉一郎)そして高校生の妹・陽子(高沢順子)である。
一見ごく平凡な家庭に見えるが、実は家族の誰もが、隠し事や不満をそれぞれ抱えており、
それを隠したり、我慢しながら暮らしている。
父・清一の疲れ切った日々、兄・茂の躁状態のセールス自慢、妹・陽子の遅い帰宅など、
すべてが隠し事や不満の伏線になっている。
母・麗子だけは、のどかに見えるが、最後に夫の胸の内を知って打ちのめされてしまう。
脚本を担当した山田太一は、本作を「ドラキュラドラマ」と名付けた。
まるで吸血鬼のような家族、つまり隠し事や不満を持っているのに、普通の格好をして、
普通にしゃべっている家族の物語である。
(制作)TBS、木下恵介プロ(脚本)山田太一
(配役)新島清一(小林桂樹)新島麗子(久我美子)新島茂(林隆三)新島稔(小倉一郎)
新島陽子(高沢順子)唐木(火野正平)津田(桃井かおり)