定年、長い余白 1993年(平成5年) ドラマ傑作選
妻を亡くした可合良介(小林桂樹)は、会社を定年後、気ままな一人暮らしをしている。
ある日良介は、父親の法事の帰りに家出娘の真弓(小川範子)と出会う。
良介は成り行き上、行き場のない真弓を家に置くことになった。
久しぶりに家族ができたような気分の良介に、かつての同僚が見合い話を持ってくる。
見合い相手は、未亡人だが子供はなく、明るい性格で人柄も申し分の無い女性だった。
良介はすっかりウキウキして、見合い後は、毎日に張り合いが感じられるのだった。
晩年を迎えた一人暮しの主人公が、ひょんなことから家出娘との奇妙な共同生活を始める。
若い娘との同居に戸惑いを感じる一方、一人身の寂しさは癒されるという、主人公の心の
深層を細やかに描き、高齢化社会の問題を正面から見据えた作品となっている。
本作は、第12回向田邦子賞(1993年)を受賞した。
脚本の岩間芳樹は、テレビ草創期から社会派ドラマを書き続けたベテラン作家である。
本作は、企業戦士の定年後の日常を私小説的に描いたものであり、岩間氏の作品としては
異色とも見られる。
だが、定年退職となった一個人の生き方という視点から、個人と社会の両方を見据えるという、
社会派ドラマとしての基本的姿勢が貫かれている。
(制作)TBS(脚本)岩間芳樹
(配役)可合良介(小林桂樹)可合文子(久我美子)下村真弓(小川範子)野田花代(加藤治子)
下村徳三郎(川谷拓三)中島(波多江光浩)