亭主の家出 1978年(昭和53年) ドラマ傑作選
鯉沼彦九(小林桂樹)は47歳、一流ホテルの宴会課長。
見合い結婚して20年になり、女子大生の長女と高校生の長男の2人の子供がいる。
職場では仕事に追われているが、家に帰れば妻と子供に主権を奪われ邪魔者扱い。
幸せな結婚式を演出する彦九の笑顔の裏にはそんな哀しい悩みがあった。
ある日、亭主の座が家庭にない、そんな亭主族のための理想郷「亭主の館」が
あることを知った彼は、そこへの家出を試みる。
亭主の家出を知った妻の琴江(三ツ矢歌子)は、事の重大さに気づくが…。
家は女房子供に乗っ取られ、居場所すら無い亭主の悲哀をテーマにした作品だが、
こうした悩める小市民役に、小林桂樹という役者は抜群の冴えを見せる。
1980年代に「亭主元気で留守がいい」などというCM(タンスにゴン)が流行り、
1990年代になると、居酒屋や喫茶店などで時間をつぶし、家族が寝静まったのを
見計らって帰宅するという、夫の「帰宅拒否症」が社会問題となった。
その意味で本作は、家でないがしろにされる亭主を題材とした、時代を先取りする
ドラマと言えよう。
(制作)KBC(九州朝日放送)テレパック(原作)吉村昭(脚本)八木柊一郎、福田陽一郎
(主題歌)森田公一とトップギャラン「ローテーション」(作詞:藤公之介、作曲:森田公一)
(配役)鯉沼彦九(小林桂樹)鯉沼琴江(三ツ矢歌子)鯉沼駒子(池上季実子)鯉沼浩一(山田隆夫)
浦山春男(杉浦直樹)小川真造(今福正雄)高丘のり子(かたせ梨乃)真木会長(森繁久彌)