天狗廻状　前篇   　1932年（昭和7年）    　邦画名作選

                                     

勤皇の志士の行動を逐一新選組に密告する者がいた。

長州藩の数名が捕えられたのもそのためだという。

また鞍馬天狗の隠れ家が新選組の襲撃を受けたことも不思議だ。

目明し長次によれば、天狗廻状と称する怪文書が出回っているらしい。

だがこの書状が、誰の手によって作成されているのか不明という。


深夜の三条河原。鞍馬天狗は突如、新選組の襲撃を受ける。

抜刀した新選組の剣陣がじりじりと天狗に迫る。

壮絶な乱闘となり、バッタバッタと数十名を斬り倒し、去って行く天狗。

その後、杉作、新公達の隠れ家が新選組に襲撃されて危機が迫る。

その危機を救うべく、白馬に乗った天狗が街道を疾駆。

だが、それを途中で待ち受ける黒馬に乗った新選組の一団。危うし鞍馬天狗！



怪文書・天狗廻状の秘密をめぐって、幕末の京洛に展開する波乱万丈の物語。


鞍馬天狗らの行動を逐一幕府側へ内通する書状が、誰の手によって作成されているのか、
この謎を巡って、単なる剣戟物以上の探偵劇的な興味が加わっている。


山中貞雄監督の演出手腕は抜群で、その巧みな筋立てと独自の話術は絶品に値し、
まさに見ごたえのある幕末時代劇に仕上がっている。


また時代劇ファンにはたまらない剣戟場面を随所に見せ、ラストの白馬と黒馬による
疾風の追い駆けシーンは、天狗映画中の白眉となった。



 
 
　製作   嵐寛プロ    配給  新興キネマ

  監督   山中貞雄　　原作　大仏次郎