とんかつ大将   1952年(昭和27年)      邦画名作選
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長屋住まいの青年医師、荒木勇作は「とんかつ大将」の愛称で親しまれる熱血漢である。

診療にいそしむ毎日だったが、ある日、大病院が長屋の土地を狙っているとの情報を耳にする。

勇作は長屋の人々の困窮を想って反対運動の先頭に立つが…。



富田常雄の原作を、軽妙な喜劇を得意とした川島が、下町情緒溢れる感動作に仕上げている。


青年医師・勇作(佐野周二)は、元大臣の父を持ちながら、気楽な長屋暮らしをしている。

あるとき、病院拡張を名目にした長屋立ち退き問題が持ち上がり、物語は勇作を中心とした
長屋の人たちによる反対運動へと展開して行く。


その間、勇作が学徒出陣している間に、将来を約束していた多美(幾野道子)が勇作の親友
だった丹羽(徳大寺伸)と結婚していた、というメロドラマ的エピソードも加わる。

最後は病院側も折れ、長屋取り壊しは取り止めとなり、父の急病の報を受けた勇作が
長屋の人々と別れを告げ、去って行く所で終わる。


戦後間もない浅草下町の長屋が舞台。長屋の立ち退き騒動、戦争に翻弄された主人公と
親友との三角関係、盲目の少女の治療など、てんこ盛りのドラマが次々と展開される。

川島雄三、全51作中の第12作目。松竹大船時代の初期の作品であり、佐野周二が若い
二枚目で、津島恵子、角梨枝子が松竹の花形として活躍していた時期の映画である。


後の日活時代のようなシニカルな脚色は見られないが、魅力的な主人公に、周辺の人物
との絡みをテキパキと捌く演出は、見ごたえがあって楽しめる。

とくに佐野に好意を寄せる女医の津島と飲み屋の女将・角との「女の意地対決」は秀逸。





  製作  松竹

  監督  川島雄三     原作 富田常雄

  配役 荒木勇作 佐野周二 菊江 角梨枝子         丹羽利夫    徳大寺伸 
      妹・静子 美山悦子 弟・周二 高橋貞二         妻・多美     幾野道子 
  作田真弓 津島恵子 艶歌師・吟月 三井弘次         お艶    小園蓉子 

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