土 1939年(昭和14年) 邦画名作選 |
茨城県下、鬼怒川流域の農村。貧しい農夫・勘次(小杉勇)は、娘(風見章子)と
倅の与吉、そして舅の卯平(山本嘉一)と暮らしている。
勘次の妻は破傷風で死んでしまったので、娘のおつぎが田畑を手伝っている。
弟の与吉の面倒を見ながら、おつぎは一生懸命、勘次と共に田畑を耕し、種を蒔いた。
貧窮に負けて、勘次はときどき、他人の田畑から作物を盗んでは警察に睨まれた。
死んだ妻の老父・卯平は、勘次とそりが合わず、炭小屋に別居していた。
四季はめぐり、おつぎも野良仕事がうまくなった。彼らの生活は常に、土と共にあった。
1910年(明治43年)朝日新聞に連載された長塚節の同名小説の映画化。
赤貧に苦しむ農家が舞台であり、小作農としてのつらい稲作の日々が描かれる。
農村の四季を描くために、一年半かけて映画はつくられたという。
田植えが済むと夏が来る。乾天続きで雨乞い、盆踊り、そして秋の収穫。
自然や土地の風景描写が美しく、その中に置かれた人物の動きはさらに忘れ難い。
主人公一家の悲劇のクライマックスとなった住まいが全焼するシーンは、甲州街道に
残っていた古い農家を買い取って、実際にそれを燃やしながら撮影したという。
この全焼シーンで祖父を熱演した山本嘉一は、映画完成の1939年暮れに亡くなった。
また、おつぎを演じた風見章子はこの映画でデビュー。泥田の中で本物の農民そこのけ
の演技に徹し、監督の内田吐夢も舌を巻いたという。
製作 日活
監督 内田吐夢 原作 長塚節
配役 | 勘次 | 小杉勇 | 平造 | 見明凡太郎 | |||||||||
おつぎ | 風見章子 | 地主の内儀 | 村田知栄子 | ||||||||||
与吉 | どんぐり坊や | 駐在巡査 | 長尾敏之助 | ||||||||||
卯平 | 山本嘉一 |