月形半平太   1926年(大正15年)     邦画名作選
直線上に配置                                      

維新前夜の京洛。勤皇派だが、ひとり開国論を唱える長州藩士・月形半平太(河部五郎)は、
同志からも異端児扱いを受け、その命すら狙われている身だった。


そんな半平太だが、祇園の名花・染八(酒井米子)や歌菊(桜木梅子)などを引き寄せては、
酒に酔い、京の夜をさんざめくという放蕩振りであった。

ある夜、半平太は、見廻組の奥平久之進を斬り捨てる。その昔、奥平に救われた染八は、
半平太を刺そうと図るのだが、彼を恋している故に果せず、悩ましい日々を送るのだった。



有名なあの「春雨じゃ、濡れて行こう」というセリフに表わされる祇園の芸妓たちとの恋模様と、
何度も登場する壮絶な剣戟シーンとが渾然となって、月形半平太という作品の魅力となっている。


映画の終盤、半平太は新選組に追い詰められ、斬って斬って、斬りまくった末に息絶えて果てる。
かくて「明治維新」という大業のために、勤皇も佐幕も大きな犠牲を払ったのである。


味方から疎まれ、敵からは命を狙われる孤立無縁な状況の中で、刹那の恋に溺れる半平太の
孤独や淋しさが、河部五郎の名演と相まって哀感たっぷりに描かれている。




 
 
 
  製作   日活

  監督   高橋寿康  原作 行友李風

  配役    月形半平太 河部五郎 芸妓染八 酒井米子
      早瀬辰馬 市川百之助 芸妓梅松 沢村春子
      藤岡九十郎 尾上多見太郎 舞妓歌菊 桜木梅子
      一文字国重 尾上卯多五郎 奥平久之進 嵐松郎

直線上に配置