討たるゝ者 1924年(大正13年) 邦画名作選 |
水木麗之助(阪東妻三郎)は、父の仇を追って十年余日、遂に仇の村田三平に巡り合う。
しかし、危うく返り討ちに遭いそうになり、そこを阪部兄弟に救われた。
本懐を達した麗之助は、阪部兄弟の屋敷に居候する身となった。
兄・主理之助は、既に妻を失っており、弟・京之助(月形龍之介)には清江という許婚がいた。
清江は、京之助と夫婦になる事を承知していたのだが、やがて麗之助に恋してしまった。
二人の不義を知った兄・主理之助は、麗之助を咎めるのだが、争った結果、麗之助は心ならずも
主理之助を斬ってしまう。
麗之助と清江は逐電し、弟・京之助は、兄の仇、恋の敵たる麗之助を討つべく出立した。
五年の歳月が過ぎ、麗之助と清江の間には子供まで出来、幸せな生活を送っていた。
一方、悲惨な生活を続けていた京之助は、遂に麗之助と邂逅し、勝負を求めた。
二人は烈しく立ち合ったが、その時、麗之助の脳裏には、かつて父の仇に返り討ちに遭いそうに
なった時の無念さが思い浮かび、自然と太刀先が鈍って京之助に討たれ、倒れ伏してしまう。
半狂乱となって麗之助の体にすがった清江は、夫の死を知り、愛児と共に自刃して果てた。
三人の屍を目前にした京之助は、兄の仇を討った喜びよりも、愛する者同士が一緒に死んで行った、
その二人の幸福が羨ましくてならなかった。
まだデビューして間もない阪東妻三郎と月形龍之介が、お互いに主役級でぶつかり合った最初の作品。
討たれる者よりも討つ者の惨めさを描いた本作は、登場人物の微妙な心理を巧みに表現した二人の名演
によって見ごたえのある作品となった。
阪妻にとっても、月形にとっても、単なる剣戟俳優だけではない所を内外に示し、大スターへの道を
歩き始める契機となった記念すべき作品である。
製作 マキノ映画
監督 沼田紅緑 原作 寿々喜多呂九平
配役 | 浪人・水木麗之助 | 阪東妻三郎 | 仇・村田三平 | 中村吉松 | |||||||||
旗本・阪部主理之助 | 瀬川路三郎 | ||||||||||||
弟・阪部京之助 | 月形龍之介 | ||||||||||||
許嫁・清江 | 森静子 |