美しき鷹  1937年(昭和12年)     邦画名作選

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孤児の安宅弓子は、母方の親戚である池野子爵の家で世話になっている。

弓子は、若く美しいが、一方で感情の赴くまま行動をし、周囲の者を翻弄していた。
しかし、そんな奔放な弓子の魅力に、男たちはなかなか抗しがたい。

池野子爵の娘・雅子の婚約者である英三もまた、密かに弓子に心惹かれるのだった…。


毎日新聞に連載された菊池寛の同名小説を、千葉泰樹が轟夕起子主演で映画化した青春喜劇。

弓子が巻き起こす騒動の数々が痛快に描かれた原作は、当時女学生の間で大人気となった。
その悪影響を恐れて、読むことを禁じた女学校もあったという。



この年、日活に入社した轟夕起子は、新人ながらヒロイン弓子に抜擢された。

「美しき鷹」は、各社競作となった作品で、東宝が金の力で原節子を引き抜いたので、
そのしっぺ返しに宝塚トップスターの轟夕起子を引き抜いて主演させたのだった。

これには世間が拍手喝采した。映画会社同士の確執ほど面白いものはないのである。

また前作「宮本武蔵」で、清楚で可憐なお通を演じた轟が、本作では小悪魔のように
男を翻弄する弓子を演じるという、そのギャップが観客に大いに受け、映画は大ヒット。

本作は、轟夕起子の出世作となり、その自由奔放な女学生像は後々まで語り草となった。

ただ残念ながら、この作品はフィルムが消失し、現在は観ることができなくなっている。



 

  製作  日活

  監督  千葉泰樹     原作   菊池寛 

  配役    安宅弓子 轟夕起子 池野子爵 上代勇吉 井上恭一 小杉勇
      妹 美佐子 田村芙紗子 娘 雅子 石井美笑子 真庭英三 津村博

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