3月18日 少年ジェット 1959年 (昭和34年) ドラマ傑作選 |
少年ジェットこと北村健(中島裕史)は、船越探偵の助手として活躍する少年探偵である。
彼は、名犬シェーンを引きつれ、愛車ラビット号で、難事件の現場に現れ、強敵に立ち向かう。
「ウー、ヤー、タァー!」と叫べば、大地は揺れ動き、大木も裂けてしまう
「ミラクルボイス」とショック銃「スーパーコルト」が、少年ジェットの武器だ。
あるとき、ルーブル美術館から、時価一億円のルイ14世のダイヤが盗まれた。
怪盗ブラックデビル(高田宗彦)の犯行だった。
熾烈な争奪戦のあげく、ついにダイヤの行方が明らかになった。
ブラックデビルとにらみあう少年ジェット、そして荒川警部。
デビルは不敵な挑戦を投げつける。
「この屋敷に隠されたダイヤ。もし、キミが先に発見したら、おとなしく手錠を受けましょう。
でももし、わたしが先に見つけたら…」
制限時間は10分。透視レンズでくまなく探すデビル。
やがて、ジェットの愛犬シェーンが宝石箱を掘り当て、三人の前に差し出した。
だが、すばやく宝石箱を奪い、逃げ去ろうとするデビル。
そのとき、ジェットのミラクルボイスが炸裂した。「ウー、ヤー、タァー!」
少年ジェットの宿敵といえば、怪盗ブラックデビル。
シルクハットに黒マント、はねあがった口ひげに片方だけのサングラスがいかにも胡散臭い。
白手袋でステッキを振り回しては雷を落とす「呼雷術」が彼の得意技である。
このブラック・デビル、一癖ある悪人だが、それなりのモラルを持っているようだ。
実際、彼は、血を見るような凶行に及んだことは一度も無い。
むしろ人命にかかわる場面に出会ったりすると、少年ジェットと協力して人助けしたりする。
本作品の素晴らしいところは、悪役のデビルを実に魅力的に描いていることである。
今どきの極悪非道の悪役と比べると、彼にはどこか許せる部分があり、
その人間臭さがなかなかいい味を醸し出している。
「ジェットくん、また会おう! それまで元気でいたまえ! フハハハ」などと、
怪盗のくせに言葉が丁寧で紳士的なキャラは実に新鮮で、むしろ清々しさすら感じられる。
最後には改心して、盗み集めた宝石のすべてを東京湾に捨ててしまうのである。
さらに「君の今後の活躍を世界のどこかで見守っている」というエールの手紙まで送ってくる。
悪人だが憎めないそのキャラクターの秀逸なできばえは、作者の構想の反映なのだろうか、
実に個性的で好ましいものを感じられるのである。
(制作)フジテレビ、大映(原作)武内つなよし(脚本)紺野八郎
(主題歌)ビクター児童合唱団「少年ジェット」(作詞:武内つなよし、作曲:宮城秀)
(配役)少年ジェット/北村健(中島裕史)ブラック・デビル(高田宗彦)船越探偵(八木沢敏)荒川警部(原田該)
浅岡健次郎(河原侃二)浅岡早苗(緑川節子)頓田紋太(中田勉)