ハンプティ・ダンプティは、高い壁の上に足を組んで座(すわ)っていました。
「まあ! たまごにそっくり!」
「たまご呼(よ)ばわりされると、まったく頭にくる」
「あら、あたしは、たまごに『そっくり』だって言っただけです」アリスは、あわてて話題を変えました。
「こんなところでなぜひとりで座(すわ)っていらっしゃるの?」
「なぜって、ひとりしかいないからさ!」
そして、落ちたらたいへんよ、と心配するアリスにむかって、ハンプティは、こう言いました。
「王様の馬と兵隊が、すぐさまわしを起こしてくれるんだ。」
そういうと、ハンプティ・ダンプティは顔いっぱいに口を広げて、にたっと笑いました。
「ところで、おまえの名前と、それから年はいくつか言ってみな」
「名前はアリスで――」
「聞くからにまぬけな名前だな!」 ハンプティは、短気そうに口をはさみます。
「年は七歳と六か月よ」
「七歳と六か月だと!」 ハンプティ・ダンプティは、考えこむように言いました。
「落ち着きのわるい年ごろじゃな。わしに言わせてもらえば 『七歳でやめとけ』 と言っとっただろうな ・・・ だが、もう間に合わんわい」
「人は大きくならずには いられないでしょう?」 アリスはいぶかしげに聞き返しました。
「ひとりでは、まあ、できまいね。でもふたりならできるさ。ちゃんとだれかに手伝ってもらえば、おまえも七歳で成長を止められたかもしれんぞ」
「まあ!」 ハンプティ・ダンプティの言っていることがよくわからないアリスは、ほかに言うことが思いつきませんでした。
そのあと、ハンプティと別れたアリスは、森に響(ひび)きわたる大きな音を聞いて、ハンプティが壁から落ちたことを知るのでした。