疑惑   1982年(昭和57年)     邦画名作選
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夏の暑い夜、富山の新港湾埠から車が海中に転落。

乗っていた地元の財閥の当主・白河(仲谷昇)は死んだが、

後妻の球磨子(桃井かおり)は、かすり傷ひとつ負わなかった。


誰もが球磨子による偽装殺人と思った。

財産めあてに結婚し、その直後に白河に三億円の保険をかけた。

しかも球磨子には情夫がおり、恐喝、傷害の前科もあるのだ。


警察は、何ひとつ物的証拠がないまま球磨子の逮捕にふみきった。

検察は有罪を立証できるのか。

球磨子には律子(岩下志麻)という国選弁護人がついたが…。



九州の大分で実際に起きた三億円保険金殺人事件をヒントに松本清張が書いた問題作。

二転三転の裁判の展開、主演の桃井かおりと岩下志麻の火花散る演技が圧巻。


本作は、冤罪がテーマとなっている。資産家の初老男性が死に、多額の保険金の受取人である

後妻に殺人容疑が掛かる。彼女は恐喝などの前科があり、札付きの悪女だった。


物的証拠は何もなかったが、彼女は殺人容疑で逮捕され、不利な状況に追い込まれる。


本作の見どころは、まったく無実の人間が「怪しい」というイメージだけで犯人と疑われ、

最悪、冤罪によって死刑や無期懲役になりかねない恐ろしさを描いている点だ。


松本清張の膨大な推理小説のなかには冤罪の問題を扱った作品が多い。

作者が描きたかったのは、先入観や偏見を排除して真実を見極めようとする視点であろう。



 
 
 製作   松竹

  監督   野村芳太郎  原作  松本清張

  配役    白河球磨子 桃井かおり 原山正雄 松村達雄
      白河福太郎 仲谷昇 堀内とき枝 山田五十鈴
      秋谷茂一 柄本明 岡村謙孝 丹波哲郎
      佐原律子 岩下志麻 藤原好郎 森田健作

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