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「還珠姫(かんじゅひめ)」です。原題は「还珠格格」(1998年作品)

中国と台湾で放映され、60%以上という驚異的な視聴率をマークしたラブ・コメ宮廷ドラマ。

原作は、台湾在住の女流作家、瓊瑤(けいよう)の小説三部作。
ドラマ化にあたっては、作者自身が原作をもとに脚本を手掛けています。

物語の舞台は清朝、名君の誉れ高い乾隆帝(けんりゅうてい)の御代。
生き別れの父に会うため、北京にやってきた少女・紫薇(しび)は、女盗賊の小燕子と出会う。

ところが、ひょんなことから小燕子が皇帝の落とし子と勘違いされ、宮中に迎えられることに。
それが宮中を騒がせることになる大事件の始まりでした。



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【第十三課 第一節】


  「还珠格格」   (一)  琼瑶 


第一集

乾隆年间,北京。
紫薇带着丫头金锁,来到北京已经快一个月了。

几乎每天每天,她们两个都会来到紫禁城前面,呆呆的凝望那巍峨的皇宫。
那高高的红墙,那紧闭的宫门,那禁卫森严的大门,那栉比鳞次的屋脊,那望不到底的深宫大院
……把她们两个牢牢的,远远的隔开在宫门之外。

皇宫,那是一个禁地,那是一个神圣的地方,那是个“可望而不可即”的梦想。
紫薇站在宫外,知道不管用什么方法,她都无法进去。
更不用说,她想要见的那个人了!

这是一个无法完成的任务。
可是,她已经在母亲临终时,郑重的答应过她了!
她已经结束了济南那个家,孤注一掷的来到北京了!

但是,一切一切,仍然象母亲经常唱的那首歌:
“山也迢迢,水也迢迢,山水迢迢路遥遥!
盼过昨宵,又盼今朝,盼来盼去魂也消。”

不行,一定要想办法。
紫薇这年才十八岁,如此年轻,使她的思想观念,都仍然天真。
从小在母亲严密的保护和教育下长大,使她根本没有一点儿涉世的经验。

丫头金锁,比她还小一岁,虽然忠心耿耿,也拿不出丝毫主张。
紫薇的许多知识,是顾师傅教的,是从书本中学习来的。
自从发现有一个衙门叫作“太常寺”,专门主管对“礼部典制”的权责,她就认定只有透过“太常寺”,才能见到想见的人。

于是,三番两次,她带着金锁去太常寺门口报到。
奇怪的是,那个太常寺的主管梁大人,几乎恨本不上衙门。
她求见了许多次,就是见不到。

这天,听说梁大人的官轿,会经过银锭侨,她下了决心,要拦轿子!
街道熙来攘往,十分热闹。
紫薇带着金锁,站在路边张望。

她的手里,紧紧的攥着一个长长的包袱。
包袱里面,是她看得比生命还重要的两样东西。
这两样东西,曾经把大明湖边的一个女子,变成终身的俘虏。

紫薇,带着一份难以压抑的哀愁,看着那行人来往穿梭的街道。
心里模糊的想着,每个人都有自己的目的和方向,只有她,却这么无助!
行人们走去走来,都会不自禁的深深看紫薇一眼。

紫薇,她是相当美丽的。
尽管打扮得很朴素,穿着素净的白衣白裙,脸上脂粉不施,头上,也没有钗环首饰。
但是,那弯弯的眉毛,明亮的眼睛,和那吹弹得破的皮肤,那略带忧愁的双眸,在在都显示着她的高贵,和她那不凡的气质。

再加上紧跟着她的金锁,也是明眸皓齿,亮丽可人。
这对俏丽的主仆,杂在匆忙的人群中,依然十分醒目。
街道虽然热闹,却非常安详。

忽然间,这份热闹和安详被打破了。
一阵马蹄杂沓,马路上出现了一队马队,后面紧跟着手拿“肃静”“回避”字样的官兵。

再后而是梁大人的官轿,再后面是两排整齐的卫队,用划一的步伐,紧追着轿子。
一行人威风凛凛,嚣张的前进着。
马队赶着群众,官兵吆喝着。

“让开!让开!别挡着梁大人的路!

…紫薇神情一振,整个人都紧张起来,她匆匆的对金锁喊:
“金锁!我得把握机会!我出去拦轿子,你在这儿等我!”

紫薇一面说,一面从人群中飞奔而出。
金锁急忙跟着冲出去。

“我跟你一起去!”
紫薇和金锁,就不顾那些官兵队伍,直奔到马路正中,切断了官兵的行进,拦住轿子,双双跪下。
紫薇手中,高举着那个长形的包袱。

“梁大人!
小女子有重要的事要禀告大人,请大人下轿,安排时间,让小女子陈情……梁大人……梁大人…”
轿子受阻,被迫停下,官兵恶狠狠的一拥而上。

“什么人?居然敢拦梁大人的轿。”
“把她拖下去!…

“滚开!滚开!有什么事,上衙门里说……”
官兵们七嘴八舌,对两个姑娘怒骂不已。

金锁忍不住就喊了出来:
“我们已经去过衙门好多次了,你们那个太常寺根本就不办公,梁大人从早到晚不上衙门,我们到哪里去找人?”

一个官兵怒吼着说:
“我们梁大人明天要娶儿媳妇,忙得不得了,这一个月都不上衙门。”

紫薇一听,梁大人一个月都不上衙门,就沉不住气了,对着轿子情急的大喊:
“梁大人!
如果不是万不得已,我也不会拦住轿子,实在是求助无门,才会如此冒犯,
请梁大人抽出一点时间,听我禀告,看看我手里的东西………。

官兵们早已七手八脚的拉住紫薇和金锁,不由分说的往路边推去。
“难道梁大人,只管自己儿子的婚事,不管百姓的死活吗”

“呼啦”一声,轿帘一掀,梁大人伸了一个头出来。
“那儿跑来的刁民,居然敢拦住本官的轿子,还口出狂言,是活得不耐烦了吗?”
紫薇见梁大人露面,就拼命挣扎着往回跑。

“大人!
听了我的故事,你一定不会后悔的……请你给我一点点时间,只要一点点就好………。
“谁有时间听你讲故事?闲得无聊吗? 另耽搁了!快打轿回府!”

梁大人退回轿子中,轿子迅速的抬了起来,大队队伍,立刻高喊着
“回避…肃静”向前继续前进。
紫薇和金锁被官兵一推,双双摔跌在路旁。
围观群众,急忙扶起二人。

一个老者,摇头叹气的说:
“有什么冤情,拦轿子是没有用的,还是要找人引见才行。”

紫薇被摔得头昏脑胀,包袱也脱手飞去。

金锁眼明手快,奔过去捡起包袱,扑掉灰尘,拿过来,帮紫薇紧紧的系在背上,一面气冲冲的说:
“这个梁大人是怎么回事?
他儿子明天娶媳妇,就可以一个月不上衙门,我们要怎么样才能见着他呢?

小姐,我们的盘缠已经快用完了,这样耗下去,要怎么办啊?
我看这个梁大人凶巴巴的,不大可靠,我们是不是另外找个大人来帮帮忙比较好”

路边那个老者,又摇头叹气:
“天下的大人”都一个样,难啊!难啊!”

紫薇看着那消失的卫队和轿子,摸摸自己背上的包袱,不禁长长的叹了口气。
片刻之后,她整整衣服,振作了一下。



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【注 釈】


乾隆】  qián lóng  乾隆帝 (けんりゅうてい) 
清朝第六代皇帝 (在位1735~1795) 大いに学術を奨励し、清王朝の最盛期を創出した。

紫薇】  zǐ wēi    夏紫薇 (か しび)
19年前にお忍びで済南地方を訪れた若き乾隆帝と夏雨荷 (か うか) の間に生まれた姫君。

金锁】  jīn suǒ   金鎖 (きんさ)
幼少の頃より紫薇に仕えている侍女で、北京へも共に出て来た。

小燕子】  xiǎo yàn zi  小燕子 (しょうえんし) 
もと女盗賊。ある事件をきっかけに皇帝の落とし子と勘違いされ、宮廷に姫と迎えられる。

丫头】 yā tóu   (婢女) 侍女
栉比鳞次】 zhì bǐ lín cì   ずらりとたち並ぶ
可望而不可即】 kě wàng ér bù kě jí   望んでも到達できない
孤注一掷】 gū zhù yí zhì   いっさいを投げ捨てる

忠心耿耿】 zhōng xīn gěng gěng   忠誠心が固い
师傅】 shī fu   (工匠) 師匠
衙门】 yá men   (官吏办事的地方) 役所
拦轿子】 lán jiào zi   (主に直訴のため) 駕籠を遮る

熙来攘往】 xī lái rǎnɡ wǎnɡ   往来が盛んでにぎやか
明眸皓齿】 míng móu hào chǐ   輝くひとみと白く美しい歯
七嘴八舌】 qī zuǐ bā shé   口々に言う

七手八脚】 qī shǒu bā jiǎo   寄ってたかって
冤情】 yuān qíng   無実の罪
盘缠】 pán chan   旅費、路銀

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【口語訳】

還珠姫 (一)

第一集

乾隆帝御代の北京。
侍女の金鎖(きんさ)を伴い、紫薇(しび)が北京にやって来てから、かれこれ一ヶ月になる。
二人は毎日のように、紫禁城の前に出かけては、その立ちはだかる皇宮をぼんやりと見つめていた。

高くそびえ立つ赤い壁、ぴったりと閉まった宮門、官兵が厳重に守る表門、すきまなく連なる鱗状の屋根、
窺い知れぬ奥深い大宮殿……これらは彼女たち二人を、宮門の外はるか遠く、厳然と分け隔てる障壁であった。

皇宮、それは見果てぬ夢、足を踏み入れることの叶わぬ神域だった。
宮門の外に立つ紫薇には、どうあっても入り込む余地などないことはわかっていた。
ましてや、あの方に会うことなど、とても成し遂げられぬ責務のように感じられた。

だが紫薇は、亡くなる寸前の母親と固く約束していた。
そして済南の実家を引き払い、有り金をはたいて北京にやって来たのだ。
だが、目の前の何もかもが、母がよく歌ったあの歌のようだった。

「山はるかに遠く、水はてなく流る、わけゆく道はかぎりなし。
ゆうべに望み、あしたに待ち、望みの果てに魂尽き果てたり…。」

いいえ、必ずなにか手立てはあるはず…。
紫薇は今年十八歳、その若さこそが、彼女に屈託のない楽天さをもたらしていたのだ。
幼い頃から母親の庇護のもと、大切に育てられた彼女はまったくの世間知らずだった。

ひとつ年下の金鎖は、忠誠心は旺盛であるものの、およそ自分の意見など持たぬ娘である。
そして紫薇の多くの知識は、教師に教わったものか、書物の中から学んだことばかりだった。

その後「太常寺」と呼ばれる役所が、主に「祭典学事」を司っていると知った紫薇は、
太常寺を通じて申し出れば、ようやくあの方に会えることができると考えた。
そこで彼女は金鎖を連れて、太常寺に日参した。

ところが奇妙なことに、太常寺の主管である梁大人(りょうたいじん)は、ほとんど役所に顔を見せないという。
紫薇は何度も面会を申し込んだが、会えずじまいに終わった。

そしてこの日、梁大人の駕籠が銀錠橋を通ると聞いた紫薇は、その駕籠を待受けようと決意した。
紫薇と金鎖の二人は、人々の往来でにぎわう街道の片隅にたたずみながら駕籠を待っていた。

紫薇の手には、なにやら長い包みがしっかりと握られている。
包みの中身は、彼女にとって命より大事なふたつの品だった。

それらは、かつて大明湖畔の一人の少女を、終生の虜囚に変えた品だ。
紫薇は、何やら重苦しい感情を抱きながら、人々が頻繁に行き交う街道を見つめていた。

身寄りのない自分の身の上に比べて、彼らは果たすべき仕事なり、進むべき道なりを目指しているのだ、
などと心の中でぼんやりと考えていたのだ。

行き交う人々は、誰もが思わず、まじまじと紫薇を見つめた。
実際、紫薇はとても美しかった。

清潔な白の上下、化粧っけのない顔立ち、かんざしも首飾りも一切つけない、いかにも質素な身なりにもかかわらず、
弧を引く眉といい、輝く瞳といい、みずみずしい肌といい、憂いを帯びた双眸といい、すべてが彼女の気高さと非凡さを物語っていた。

しかも、侍女の金鎖もまた明眸皓歯の美少女ときている。
器量良しの主従は、人混みに紛れていてもひどく人目を引くのだった。

街道は、にぎやかだが、行き来する人々の足並みは整然と秩序立っていた。
突如、そのにぎわいと足並みが打ち破られた。

騒がしい馬蹄の音がして、大通りに騎馬の一群が現れた。
その後方に「静粛」「回避」などと書かれた札を持った官兵が付き従って来る。

さらにその後ろに梁大人の駕籠が続き、最後尾には二列に並んだ護衛隊が足並みそろえて付き従っていた。
一行は威風堂々と行進して来る。

騎馬隊が群衆を追い散らし、官兵が大声で叫ぶ。
「どけ!どけ!梁大人様のお通りだ!」

紫薇の表情が奮い立ち、体全体に緊張がみなぎる。彼女は慌ただしく金鎖に向かって叫んだ。

「金鎖!今が駕籠を停めるチャンスよ!あなたはここで待っていて!」
そう叫びながら紫薇は、人の群れの中から一気に飛び出す。

「私も一緒に行きます!」金鎖もまた後に続いて飛び出して来た。

隊列の行進を顧みず、二人は大通りの真ん中に飛び出し、駕籠を停めてその前にひざまずいた。
紫薇が手にした長い包みを高く掲げる。

「梁大人!大切なお話があります。どうか駕籠からおりて、私にお時間をください!」

やむなく駕籠が停まると、官兵たちが憎々しげにどっと押し寄せる。
「何者だ?大胆にも梁大人の駕籠を遮るとは!」
「この女を追い払え!」

「ええい、立ち去れ!何か用があるなら、役所で言うがよい!」
官兵達は口々に罵る。

たまりかねて金鎖が叫ぶ。
「お役所にはもう何度も行きました。でも太常寺は何もしてくれないじゃないですか! 
梁大人も朝から晩までいらっしゃらないし、一体どこで申し立てしろって言うんです?」

官兵のひとりが怒鳴りつけた。
「梁大人はご子息の婚礼を明日に控え、お忙しくていらっしゃるのだ。この一ヶ月は役所に出勤なさらんのだ!」

これにはさすがの紫薇も憤然として、駕籠に向かって叫ぶ。
「梁大人!やむにやまれぬ事情がない限り、駕籠をお停めしたりはいたしません。

助けを求めても当てがないからこそ、このような無礼な仕儀に及んだのでございます。
どうか梁大人、ほんの少しの時間を工面してください。私の話をお聞き入れ、そして私の持参した品をご覧ください。」

官兵たちは、よってたかって紫薇と金鎖をひったてると、有無を言わさず道の端へ突き飛ばした。
「梁大人、ご子息の婚礼は大事でも、庶民の生死はどうでもよいとおっしゃるのですか?」 

そのとき、サッと駕籠の垂れ幕が開き、梁大人が頭をつきだした。
「どこのうつけ者か!本官の駕籠を遮ったうえに、こざかしい口をききおって、命が惜しくないのか?」

梁大人が顔を出したのを見た紫薇は、懸命にもがいて駕籠のところへ戻ろうとする。
「大人!どうか話を聞いてください。決して後悔はさせません。ほんの少しお時間をください。ほんのちょっとでいいんです。」

「おまえの話を聞く時間などあるものか?わしが暇を持て余しているとでも思うのか?
ぐずぐずするな!早く駕籠を屋敷に戻せ!」

官兵に突き飛ばされた紫薇と金鎖は、ともども道の端にころがり倒れた。
遠巻きに見ていた群衆が、急いで二人を助け起こす。

ひとりの老人が、頭を振りながらため息をつく。
「どういう事情か知らぬが、駕籠を停めてもどうにもならん。やはり誰か仲立ちしてくれる人をさがすことじゃ。」

紫薇は、転んだはずみで頭がぼうっとしていた。包みも飛ばされて道端に投げ出されている。

侍女の金鎖がすばやく立ち上がり、包みを拾い上げてほこりを落とし、戻ってきて紫薇の背にしっかりと結わえ付ける。
彼女は、湯気をたてて怒りながら言う。

「梁大人ってお方は、まったくなんて方でしょう?
息子の嫁取りが明日だからって、一ヶ月も出勤しないなんて、用のある人間はどうすりゃいいんです?

そしてお嬢さま、私たちの手持ちのお金は、このままでは乏しくなるばかり。何とかせねばなりません。

それにあの梁大人、何とも非道なお方で、どうにもあてになりません。
誰かほかの大人を探して手助けをしてもらってはいかがでしょうか?」

さきほどの老人が、再び頭を振ってつぶやく。
「世の大人などと言うても、みんな似たり寄ったり。まったく厄介そのものじゃ!」

紫薇は、護衛隊と駕籠が行ってしまった方角を見やり、背中の包みを撫でると、思わずほうっとため息をついた。
そして、ようやく服を整えると、気力を振るい起こした。