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【第四課 第二節】

姨妈驾驶着凯迪拉克汽车,平稳地行驶在高速公路上。

上下四五层的立体交叉公路,不尽的车灯,排更整齐耀人眼目。
王起明和郭燕望着窗外的一切,感到新鲜无比,十分兴奋。

一会儿,汽车驶进了纽约的繁华区一一曼哈顿。

高楼大厦鳞次栉比,世界第一大都会城市,曼哈顿。
五光十色的霓虹灯,千姿百态,争妍斗艳,映亮了夜空。
他们两人望着这美景,瞠目结舌。

突然一辆警车,在拥挤的已经凝固的车河中左拐右弯,扯着嗓子尖声叫着。
「出事了!」 王起明不由自主地说。

「不!」 姨妈微微一笑,见怪不怪的样子,说:「这是经常的事情」
王起明吃惊地睁大眼睛。

三、四辆消防车被卡在车队当中,动弹不得,凄惨地嚎叫,显得无可奈何。

「刚来纽约的人…」 姨父操着浓重的广东腔,一板一眼地介绍:
「大部分都惊慌失措,哎呀,这里发生了什么事情啦,是不是出了什么大事啦,其实,什么事情也没发生。
你看,人们不都是在干着自己的事,走自己的路吗?」

王起明再一看,外面的人果然都是若无其事的样子,谁也不去瞥一眼街上那些喧闹的车辆。

「这地方…」 王起明感慨地说:「邪性!」


汽车终于驶出了繁华热闹地段,没有多久,喧哗与热闹没有了。
出现在他们眼前的是: 破旧的楼房前,一群群街头族,躲在黑暗的角落里,弯着腰在烤火。

马路边,横三竖四地躺着肮脏的流浪汉,他们在不住地往自己嘴里倒着酒精。
两个身着暴露的女郎,向车里的王起明挤眼睛,挥手。王起明不知发何应会。

「这是美国? 纽约?」 王起明捺住心头的疑惑,向姨妈发问。
「对。是纽约」 姨妈回答得十分肯定。

豪华的凯迪拉克轿车停在了一座破旧的楼房前。

 
姨   妈  :  到了。下车吧。
王起明 :  下吧。我来,我来。

郭  燕 :    姨妈,咱们就住这儿吗?

(姨妈没有离开座椅,只是侧过了头,对她说)

姨   妈 :   不,是你们住在这儿。考虑到你们的经济状况,这的房租比较便宜。

王起明 :    (向姨叔)  谢谢您。
姨   妈 :   燕子,过来!
郭   燕 :   哎,姨妈。
姨   妈 :   叫起明也过来一下。

郭   燕 :   起明。
王起明 :   唉,姨妈。

(姨妈从名牌钱夹里拿出了一个信封)

姨   妈 :   这有一份为你联系的工作。明天一早就能上班了。

王起明 :   哎呀,姨妈,你看。
郭   燕 :   太谢谢您了。
王起明 :   您这让我说什么好呢。

姨   妈 :   对了。信封里还有,我借给你们的五百块钱。加上房租四百块钱,一共是九百块钱。
                不急着还,先用,你们安定下来,过几天再说吧。
                对了,今天晚上,我和你姨夫还有个应酬。就不陪你们进去了。
                有什么问题,我们明天再打电话联系。威廉,咱们走吧。

姨   叔 :    起明,这是地下室的钥匙。楼上太贵了。你们就住在地下室吧。52号室,记住。

王起明 :    好了,谢谢您。
姨   妈 :    good-bye.

(姨妈他们动了汽车,离开了这里。王起明和郭燕面面相觑,不知怎么办才好)

王起明 :    你先在这看看,我先下去看看去。
郭   燕 :    你慢一点。

(正当她站在门口时,迎面走来一个一步三晃的黑人)

黑   人 :    hi,lady,can  I  help you?  (嗨,夫人,要帮忙吗? )

郭   燕 :    不,不! 起明,快上来,你要拿我东西!
黑   人 :    I help you. (我来帮你拿)。

王起明 :    no,no,no. (不,不)
黑   人 :    oh,I'm sorry,I  just think to give you a little help. (对不起,我只是想帮忙)

(黑人歪着头离开这里)

郭   燕 :    吓死我了。

王起明 :    走,下去吧。

(王起明推开了地下室的门。门呻吟了一声。一股很难形容的味道扑面而来)

王起明 :    进来了吗?
郭   燕 :    进来了,怎么这么黑呀。

王起明 :    等会儿。你给我让让地儿,我找下灯。哎,应该在这种地方。

(王起明打开了那盏黄颜色的小灯。一只超级市场上用的,装水果的空木箱,两只没了后背的椅子,
一张肮脏的双人床垫,这是全部家俱)

王起明 :    把东西放下吧。我进去瞅瞅啊。

(郭燕痴呆呆地走到空木箱前,慢慢地坐下来,双手托着下巴)

王起明 :    燕子,到里边瞅瞅,这里边大了去了。过来呀。
                 怎么了,你呀?  哭了,怎么哭了?  你瞧,这儿有一灯。哎,能亮。
                 别哭了,你瞅,这儿多好啊。被子,睡觉,这么大的房子。

郭   燕 :    哪有被子啊,连个枕头都没有。
王起明 :    不是有床吗?

郭   燕 :    到了这谁都不管我们。在这种鬼地方,我觉得饿死了都没人管我们。
                 早知道是今天这个样子,打死我也不来。

王起明 :    你听我说,咱们不是来了吗?  而且不可能再回去,对吧?
                 没人管好了,你不是最烦人管你吗?

郭   燕 :   可是这个样子。
王起明 :   这个样子怎么了,多好哇。这是人家成心画的。画似的,多好看,你见过柏林墙吗? 
                 来,把衣服脱了,跟我进去。你瞅瞅,你瞅瞅你就知道了。走,里边特热。别看外边这么冷。
                 里边一件衣服都穿不住。呆会儿都得脱了。哎,你上这里瞅瞅,特热。连衣服也穿不住。你瞅,这是什么。
 
郭   燕 :    是个厨房?
王起明 :    厨房。你瞅瞅,这叫什么? 管道煤气,北京有吗?

郭   燕 :    这火比北京大多了。
王起明 :    这个冰箱,瞅瞅,足有三百吧。我告诉你,再惹我生气。我把你冻死在里边。

郭   燕 :    你敢。

王起明 :    瞅着。
郭   燕 :    哎,起明,这是个什么地方? 你来看看这里。

王起明 :    哪儿呀?
郭   燕 :    这间。

王起明 :    这,嘿,真的,怎么没看这儿呢。
郭   燕 :    你看看呀。

王起明 :    卫生间吧。哎,真是个卫生间。
郭   燕 :    还挺大的呢。

王起明 :    嘿,有厕所。热水啊。
郭   燕 :    是吗?

王起明 :    你摸摸,洗澡,能洗澡。
郭   燕 :    怎么你现在就要洗澡哇。

王起明 :    脱呀。
郭   燕 :    外边的箱子里的东西,还没有拿出来呢。

王起明 :    解解乏。
郭   燕 :    什么都没有拿。你怎么说洗就洗呢?  

王起明 :    你真是坐了十几个小时的飞机了。你不去我去了。

郭   燕 :    我跟你说外边的门还没有锁上呢。这儿随时都有人进来打劫的呀。

王起明 :    什么,打什么劫?  赤身裸体的。

(王起明拉起妻子的手,为她脱衣服,把她推到洗澡间门口)

王起明 :    到了美国就欠了一屁股债。谁劫我呀,我还想劫别人呢。

(这就是他们到纽约的第一天。两个赤裸的身体在洗澡间的蒸汽里紧紧拥抱。
他们除了自己赤裸裸的身体以外,什么都没有。他们除了紧紧地抱住对方以外,别无他法


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【注 釈】

【凯迪拉克】 kǎi dí lā kè    キャディラック
【排更整齐】 (=排得更整齐) 極めて整然とした並びに

【曼哈顿】 màn hā dùn    マンハッタン
【争妍斗艳】 zhēng yán dòu yàn    あでやかさを競う

【繁华热闹地段】 fán huá rè nao dì duàn
にぎやかな繁華街。 地段 (=区域,指地面上的某一段)

【街头族】 jiē tóu zú
ストリート族。定職を持たず路上生活をする若者。

【横三竖四】 héng sān shù sì
(=有的横,有的竖,杂乱无章。形容纵横杂乱、乱七八糟)
〈成〉乱雑。不揃い。ごちゃごちゃ。足の踏み場もない。
<用例> 站前横三竖四地停着很多自行车。
(駅前には自転車が乱雑に停められている)
Bicycles were lying this way and that in front of the station.

【不住地】 bú zhù de
〔副詞〕 ひっきりなしに。しきりに。
<用例> 他不住地抽烟。(ひっきりなしにたばこを吸う)

【挤眼睛】 jǐ yǎn jing   ウインクする。目配せする。
【应会】 yìng huì   (=应付)  応対する。あしらう。

【捺住心头的疑惑】 nà zhù xīn tóu de yí huò
納得いかない胸の内をこらえる。捺住 (=抑制)
<用例> 勉强捺住心头的怒火。(グッと胸の怒りを抑える)

【一步三晃】 yí bù sān huàng  (=形容走路不稳的样子。摇摇晃晃)
足元をふらつかせる。千鳥足。

【让地儿】 ràng dì r
場所を譲る。場所をあける。地儿 (=坐或立的地方)
<用例> 你可以给我让点儿地儿吗? (ちょっと席をつめていただけますか)

【找下灯】 zhǎo xià dēng  (=要先找到灯)  明かりを探してみる。

【这里边大了去了】 zhè li biān dà le qù le
実に大きい。 大了去了(=大得很的)
<用例> 瞧热闹的人可多了去了。(弥次馬が実に多い)

【不是最烦人管你吗】 bù shì zuì fán rén guǎn nǐ ma
人からとやかく言われなくてすむのでは。
最烦人管你 (=人家管你是最烦人的事情)

【这是人家成心画的】 zhè shì rén jiā chéng xīn huà de
これは訳ありに描かれた絵だ。

【柏林墙】 bó lín qiáng ベルリンの壁。
東西ベルリン境界上に43㎞ にわたって築かれた壁。
東から西への脱出を防ぐために1961年東側が構築。
東欧民主化のなかで、1989年11月に開放された。

【一件衣服都穿不住】 yī jiàn yī fu dōu chuān bú zhù
(暑くて) 服なんか着ていられない。

【管道煤气】 guǎn dào méi qì (= city gas)   都市ガス

【还挺大的呢】 hái tǐng dà de ne
意外と大きいのね。 还 (=没想到)

【解解乏】 jiě jiě fá (=消除疲劳、疲乏,使体力恢复)  疲れをとる。

【你怎么说洗就洗呢】 nǐ zěn me shuō xǐ jiù xǐ ne
ひと風呂浴びるなんてよく言えたものね。洗就洗 (=先最好洗澡)

【欠了一屁股债】 qiàn le yī pì gu zhài  (=一身债务)
借金だらけ。一屁股 (=满是)

【我还想劫别人呢】 wǒ hái xiǎng jié bié ren ne
こっちこそ泥棒したいくらいだ。 还 (=倒)
<用例> 我还想问你呢。(ぎゃくに聞いてみたいものだ)

【别无他法】 bié wú tā fǎ (=没有别的办法)  他に方法はない。

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【口語訳】

叔母が運転する 「キャディラック」 は、穏やかに高速道路の上を疾走する。

複雑に交差する立体道路、尽きない車両のライトは整然として目を奪われる。
窓の外を眺めている王起明と郭燕にとって、見るものすべてが新鮮で刺激的だった。

やがて車はニューヨークの繁華街マンハッタンに入った。

摩天楼が建ち並ぶ世界に冠たる大都市、マンハッタン。
色とりどりのネオン灯が、多彩に、鮮やかさを競い合うように、夜空に映えている。
彼らはこの比類のない美しい景色に、あっけにとられてものが言えなかった。

突然、込み合う車の流れの中で、パトカーのけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「事故だ!」 王起明は思わず叫び声を上げた。

「いいえ」 叔母は意外にも動じない様子で微笑んだ。 「これはいつものことよ」
王起明はびっくりして大きい目を見開く。

数台の消防車が、渋滞する路上で身動きがとれず、悲惨にサイレンを鳴らし続けている。

「はじめてニューヨークに来た者は …」 濃い広東訛りの叔父が一言一言語りはじめる。

「すべて慌てふためいてしまう。ここはどんな事が発生しても、どんな大事でも、実は、どんな事も発生していない。
見なさい、人々はすべて自分だけの事をしている、自分の道だけを歩いている」

王起明がふたたび外を見ると、人々はやはりすべて何事もなかったような様子で、
誰もが街頭の騒がしい出来事に一瞥だにしようとしなかった。

「この街は …」 王起明は、感慨深げに言葉を漏らした 「まともじゃない!」


物騒がしい繁華街を抜けると、車は一切の喧騒から解き放たれた。
彼らの目の前に一棟の古びて立ち腐れたビルが現れた。

片隅にたむろする失業者たちが、暗がりの中で腰をかがめ火に当たっている。
道路わきには、ざこ寝している浮浪者たちが、しきりにアルコールをあおっていた。

あからさまに肌を露出した街の女たちが、王起明に意味ありげな目くばせを送り手を振る。
王起明は何と対応していいか戸惑うばかりだった。

「ここは本当にニューヨークですか?」 王起明が物言いをつけるように叔母に問い掛ける。
「そう、ここはニューヨークよ」 叔母はきっぱりと言い切った。

キャディラックは一棟の老朽化したビルの前で止まった。

叔   母  :  着いたわ。降りて。
王起明 :   おい、降りよう。 あっ、荷物は私が降ろしますから。

郭   燕  :  叔母さん、私達はここに住むの?

(叔母は座席に座ったまま、頭を横に傾けて言う)

叔   母  :  いいえ、あなた達がここに住むのよ。
               あなた達の懐具合を考えてのことよ。ここの家賃は比較的安いわ。

王起明 :   (叔父に)  あっ、どうもお手数かけまして。

叔  母  :   燕子、ちょっと。
郭  燕  :   ええ、叔母さん。

叔  母  :   起明もこちらへいらっしゃいな。
郭  燕  :   起明。
王起明 :   はい、叔母さん。

(叔母はブランドの財布から一通の封筒を取り出す)

叔  母  :   あなたの勤め先だけど、もう先方に連絡しておいたわ。明日からすぐ仕事よ。
王起明 :   いやあ、叔母さん、それはどうも。

郭  燕  :   本当にすみません。
王起明 :   本当に何とお礼を言っていいか。

叔  母  :   そうそう、封筒の中に五百ドル入ってるわ。
                家賃は四百ドル、あわせて九百ドル。
                返すのは、あなたたちが落ち着いたらでいいわ。じゃあ、そのうちゆっくりお話でもしましょう。

                今晩、私と主人はパーティがあるから、これで失礼するわ。
                家の中まで付き添いできないけど、何かあったら、明日電話してね。
                あなた、さあ、出かけましょう。

叔  父  :   起明、これが地下室の鍵だ。上の階は家賃が高いから下にしたんだ。
                52号室だ、忘れるなよ。

王起明 :   わかりました、有難うございます。
叔  母  :   じゃあ、頑張ってね。

(叔母たちの車は離れて行った。 さてこれからどうするか。王起明と郭燕は互いに顔を見合わせた)

王起明 :  俺は先に部屋の様子を見てくるよ。お前はここで待っていてくれ。
郭  燕  :  気をつけてね。

(彼女が入口で待っていると、ひとりの黒人がよろめくような足取りで近づいて来た)

黒  人 :   hi,lady,can  I  help you ?  (へい、姐さん、手伝おうか?)
郭  燕 :   いえ、けっこうです!  起明、すぐ上がってきて! あたしの荷物を持ってちょうだい!

黒  人 :   I help you. (手伝ってやるよ)
王起明 :  no,no,no. (おい、やめろ)

黒  人 :   oh,I' m sorry.  I  just think to give you a little help.  (ごめん、手伝おうと思ったんだ)

(黒人は首をかしげながら離れていった)

郭   燕 :  ああ、びっくりした。
王起明 :  さあ、中に入ってみよう。

(王起明が地下室の扉を押し開ける。扉は軋むような音を立てた。
ひとすじの形容しにくい異臭が正面から漂って来る)

王起明 :  入って来れるか?
郭   燕 :  ええ、でも中は真っ暗ね。

王起明 :  ちょっと待って。そこを通してくれ。明かりを探してみる。
               ええと、このあたりのはずだ。

(王起明は小さな黄色い電灯を点けた。
スーパーで見かける果物用の空っぽの木箱。背もたれの無い二脚の椅子。
埃のつもった大きなマットレス。これらが家具のすべてだった)

王起明 :  ここへ荷物を置こう。中へ入ってちょっと見てくるよ。

(郭燕がぼんやりと空っぽの木箱に近づき、ゆっくりと坐る。両手はあごを支えている)

王起明 : 燕子、こっちへ来て見ろ。中は広くて大きいぞ。 来いったら。
              おい、どうした? 泣いてるのか?

              見ろよ、ここに電灯があるんだ。ほら、明るいだろ?
              泣いてないでよく見るんだ。ここはなかなかいいところだぞ。
              布団もあるし、こんなに広い。

郭   燕 :  どこにあるのよ、枕さえないじゃない。
王起明 :  ベッドがあるぞ。

郭   燕 :  ここには私たちだけなのね。
               こんなところ、餓死しても誰も気づいてくれないわ。
               もっと早くわかってたら、こんなところ絶対来ないわ。

王起明 :  もう来てしまったんだし、いまさら帰ることもできない。そうだろ?
               誰も気づいてくれなくてもいいじゃないか。
               人にとやかく言われなくてすむ。

郭   燕 :  でもこの部屋は何よ。

王起明 :  俺はなかなかいい部屋だと思うよ。
               この壁の絵なんか最高じゃないか。ベルリンの壁の絵みたいだろ?
           さあ、コートを脱いで、中へ入ってみよう。

               自分で見てごらん、見ればわかるから。さあ、奥の方は暖かいぞ。
               外の寒さなんて関係無い、中は服一枚もいらないぜ。

               すぐにぜんぶ脱ぐことになるさ。ほら、ここに来て見てみろ、とびっきり暖かいぞ。
               服なんか着ていられない暑さだ。見ろよ、ここは何だ。

郭   燕 :  台所ね?
王起明 :  そう、台所さ。これ何と言うのだっけ? 都市ガスかな、北京にはないだろう?

郭   燕 :  北京より火力が強そうだわ。

王起明 :  この冷蔵庫、たっぷり300リッターはあるぜ。
               お前、今度泣きごと言ったら中に閉じ込めて凍死させてやるぞ。

郭   燕 :  どうぞ、やってみる勇気があればね。
王起明 :  覚えとけよ。

郭  燕  :  ねえ、起明、ここは何かしら? 見てみてよ。
王起明 :  どこ?

郭  燕  :  この部屋よ。
王起明 :  ここは? へえ、ほんとだ。どうして気がつかなかったんだろ。

郭  燕  :  見てきてよ。
王起明 :  シャワー室だこいつは。本当にシャワー室だぜ。

郭  燕  :  ずいぶん広いのね。
王起明 :  おい、トイレもあるぞ。お湯だ。

郭  燕  :  本当?
王起明 :  ほら触ってみろよ、風呂だ、ひと浴びできるぞ。

郭  燕  :  風呂って、あなた、どうして今でなけりゃいけないの。
王起明 :  さあ、脱いだ、脱いだ。

郭  燕  :  外には荷物があるのよ、まだ持ってきてないのよ。
王起明 :  疲れをとってからだ。

郭  燕  :  何も出してきてないのに。あなたってば、どうしてそんな気になれるの? 
王起明 :  十数時間も飛行機に乗ってたんだぜ。シャワーが先だ。

郭  燕  :  表のドアには鍵をかけていないのよ。泥棒が入ってくるかもしれないのに。
王起明 :  泥棒か、何をとるんだ。こちとら素っ裸だ。

(王起明は彼女の手を引いて服を脱がせ、そのまま浴室の中へ引き入れる)

王起明 :  アメリカに来たとたん、借金どっちゃり。 誰が泥棒するって? こっちこそ泥棒したいくらいだ。

(これが彼らのニューヨーク第一日目だった。
浴室の蒸気の中で、二人はお互いの体をしっかりと抱きしめあう。

彼らは赤裸々な自らの体以外、何も持ち合わせていなかった。
彼らはお互いの体をきつく抱きしめる以外、他に何も出来なかった