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「ニューヨークの北京人」 です。原題は 「北京人在紐約」 (1992年作品)
異国の地、ニューヨークで 「アメリカンドリーム」 を夢見て奮闘してもがく北京人の物語。
文化や価値観の衝突、そこから生まれる痛みや孤独を生々しく描いたストーリー展開。
中国全土で高視聴率をマーク、社会現象を巻き起こした大ヒットドラマとなりました。
さて主人公は北京の音楽家、王起明。彼は妻、郭燕 と共に憧れの土地ニューヨークにたどりつきます。
しかし彼らを待ち受けていたものは、予想外の試練と、終わりがない奮闘の日々だけでした。
(1) (2) (3)
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【第四課 第一節】
(在入境审查处)
审查官 : passport,please. (请拿出护照) welcome to New York. (欢迎来纽约)
王起明 : pardon? (什么? 请再说一遍)
审查官 : welcome to New York. (欢迎来纽约) next,please. (下一个)
王起明 : welcome? 噢,欢迎?! (的意思) 哎,郭燕,叫你了。他说下一个。
(在纽约国际机场大厅。王起明和郭燕拖着沉重的行李,在象迷宫一样的大厅里东张西望。
形形色色的人种在这大厅里汇聚,这里仿佛包容了整个世界 … )
郭 燕 : 起明,你看见姨妈他们了吗? 问你呢! 你再看看呀。
王起明 : 我找着呢。
郭 燕 : 他们要是不来,咱们就惨了。
王起明 : 你呀,你把东西先放在这儿等着。跟你说,姨妈是咱亲人。不能把咱扔这儿不管。
(扩音器里响起了女性柔和的英语)
郭 燕 : 哎,起明,你听听那广播里说什么来着。你听听呀。
王起明 : 听着呢。
郭 燕 : 那它说什么来着。
王起明 : 你让我听呀,老问。
郭 燕 : 对不起。
王起明 : … Ladies and Gentleman (女士们,先生们) …。
郭 燕 : 这两句谁听不懂啊?
王起明 : 你焦什么急呀。老焦急你问。挺耳熟的一词过去了。本来说的就快。
郭 燕 : 我看人家就是说的慢,你也听不懂。
王起明 : 那你听,你听。你不是也学过英语吗?
郭 燕 : 我觉得咱们就象掉海里了。我说你跟这儿浪费什么时间。
这上面的字你懂吗,又没中国话。你什么都看不懂。
王起明 : 这不是有日本语吗。
郭 燕 : 日文你懂吗?
王起明 : 我猜猜行吗?
郭 燕 : 行,你猜吧。
王起明 : 不就是电话的使用吗? 电话吗?
郭 燕 : 这电话可是要付钱的。你身上有零钱吗? 就知道你没准备好。
早就跟你说准备准备的,到这会儿。你说我们该怎么办呢。
(一位机场服务小姐走上前来询问)
服务员 : may I help you? (我能帮助你做点事呀?)
郭 燕 : 她可能是 …。
王起明 : 啊,她那意思是说帮忙。对,对,那个。
服务员 : okay,sir,where do you want to go? (好,先生,你们要去哪?)
王起明 : 嗯,那个。 ho … home.
服务员 : I understand,sir,no problem, give me your address?
(明白了,没问题,能给我地址吗?)
郭 燕 : 你说英语呀.
王起明 : 你别忙。我知道。这不是英文吗,home.
服务员 : give me your address? (你有地址吗?)
王起明 : I … go home. (我回家)
(王起明被这一连串的外国话弄得不知所措,想不出更好的招儿来,
光是一遍一遍地重复着 「 I go home.」 机场小姐微笑着,十分耐心地说 )
服务员 : ok,no problem,you have to go through that door,outside and get a taxi,alright?
.(好,没问题。从那个门出去,到外面叫出租车就能回家了)
王起明 : 哎,「TAXI」 是什么意思来着。
郭 燕 : 我不知道。你问她。
服务员 : yes,taxi,outside,sir,alright? outside,you have to get a taxi,
outside,home,yes,okay? bye. (到外面叫出租车,外面,到外面才能叫出租车)
王起明 : 哎,明白了,bye,bye.
郭 燕 : 起明,她到底跟我们说什么来着。咱们现在该怎么办呢,到底。
王起明 : 我哪知道她说什么。你老跟这打岔。
郭 燕 : 你跟我喊什么呀。
王起明 : 得得。
郭 燕 : 在北京的时候,就让你好好学英文。你认真学了吗? 这会来跟我急来了。
跟你那群狐朋狗友,不是吃饭就是告别的。你看你那本护照,早就给你显摆烂了。
(王起明从口袋里取出一根香烟含在嘴里)
郭 燕 : 哎,我告诉你这可是不能抽烟的。
王起明 : 怎么了,在美国还不能抽根美国烟。
(请勿吸烟的标识贴在墙上)
郭 燕 : 你看看,那墙上写着什么来着。
王起明 : 你别说我,你怎么不学英语啊。整天的买衣服,逛两月的商场。
有什么用啊,非让我穿西装。你看看,这有人穿正经西装吗?
郭 燕 : 你要是不喜欢,不喜欢你脱了呀。
王起明 : 脱就脱,我正觉得热呢。
郭 燕 : 就知道欺负我,跟我嚷嚷。
王起明 : 我跟他们嚷嚷他们得听得懂啊?
姨 妈 : 燕子 …。
郭 燕 : … 姨妈!!
(郭燕突然一声兴奋异常的尖叫,象是一个飘泊海上三天三夜的逃生者突然看见了救生船。
王起明和郭燕一对男女惊叫着,两脚离了地又蹦又跳来到郭燕姨妈身边。
姨妈拉着他的先生也紧走了几步,一边走一边说: 「对不起,对不起! 路上塞车了,晚了,对不起!」
王起明和郭燕,赶忙行礼,一连叫了好几声姨妈姨父,足足地这么一显示东方文明古国的文明礼貌。
姨父显然是比姨妈大二十岁,说话时广东口音很重,「欢迎你们到纽约来! 一路上辛苦了!」
王起明赶忙说: 「不累,不累! 」 「 谢谢姨父姨妈! 」 郭燕也跟着客气。
「我们 … 上路吧! 」 姨妈微笑着向他们提示 … )
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【注 釈】
【东张西望】 dōng zhāng xī wàng (=这里那里地到处看)
〈成〉きょろきょろ見回す。
<用例> 考试时,不许东张西望。
(テスト中、きょろきょろしてはいかん)
During exams it is not permitted to look around.
【形形色色】 xíng xíng sè sè (=各式各样,种类很多)
〈成〉種々さまざまである。
<用例> 这部小说描绘 miáo huì 了形形色色的人物。
(この小説は種々さまざまの人物を描き出している)
The novel depicts characters of every description.
【人种】 rén zhǒng 人種。
【汇聚】 huì jù 寄せ集まる。(=gather 凑在一起)
<用例> 京剧名家汇聚一堂。(京劇の大御所が一堂に会する)
【包容】 bāoróng 収容する。(=contain 容纳)
<用例> 很有包容量。(包容力がある)
【来着】 lái zhe 〔助詞〕…した.…していた.
<用例> 你刚才说什么来着? (君はさっき何を言ってたっけ)
【不知所措】 bù zhī suǒ cuò
(=不知道怎么办才好。形容处境为难或心神慌乱。心慌意乱)
〈成〉なすすべを失う。茫然自失。 ⇔ 从容不迫
<用例> 听说自己被公司辞退了,他爽然不知所措。
(会社をクビになると聞いて、どうしてよいか途方に暮れた)
Hearing that he was fired by the company,he was totally at a loss.
【招儿】 zhāor 手立て。手段。 (=way of doing 办法)
<用例> 耍花招儿 shuǎ huā zhāor (一杯食わせる)
【打岔】 dǎ chà (=interrupt 打断别人说话或工作)
口をさしはさむ。まぜかえす。
<用例> 别打岔,听我说下去。(口出しするな、話を聞いてろ)
【得得】 dé dé わかった、もういい。(制止)
【狐朋狗友】 hú péng gǒu yǒu
(=泛指一些吃喝玩乐、不务正业的朋友)
〈成〉キツネやイヌの友人。〈喩〉悪友ども。不良仲間。
<用例> 他整天结交一些狐朋狗友。
(彼は朝から晩までたちの悪い奴等と付き合っている)
He keeps depraved company all day long.
【显摆烂】 xiǎn bai làn (= ruin the passport with showing off to everyone)
皆に見せびらかしてボロボロにしてしまう。「烂」は、状態を表す結果補語。
<用例> 衣衫 yī shān 破烂。(服がぼろぼろだ)
【还不能抽根美国烟】
アメリカのたばこを吸っちゃいけないってのか。
「还」 は反問の副詞。
<用例> 他打我,还不能还手吗? (殴られたのに仕返しして悪いのか)
(=难道不能还手吗? =怎么不能还手呢?=哪能不还手呢?)
【非让】 fēi ràng (=force to 逼迫让)
無理強いする。
<用例> 他不会做饭,你非让他做,这不是难为人吗?
(料理ができないのに、無理にやらせるなんて意地が悪い)
【正经】 zhèng jing まともな。正式の。(=formal 正式的)
【嚷嚷】 rāngrang 〈口〉やかましく声を立てる。がなる。わめく。
【得 děi 听得懂啊?】 聴いて分かるのかい。
〈方〉「得」は、可能を表す助動詞。(=can 可能)
<用例> 他得敢骂我。(彼がどうして悪口を言うものか。どうして言わせるものか)
【足足地】 zú zú de 十分に。重々。(=fully 十分)
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【口語訳】
(入国審査所)
審査官 : passport,please. welcome to New York.
王起明 : pardon?
審査官 : WELCOME TO NEW YORK! next,please.
王起明 : welcome? ああ、「ようこそ」って意味か。郭燕、君の番だってさ。
(ニューヨーク国際空港ロビー。
王起明と郭燕は重い荷物を引きながら、まるで迷路のような空港ロビーの中で途方に暮れていた。
さまざまな種族の人間が押し合いひしめき合うさまは、あたかも世界全体がこの場所に包み込まれているかのように思われた)
郭 燕 : 起明、叔母さんはどこかしら? もう一度よく探してよ。ねえってば。
王起明 : 今、探しているところだ。
郭 燕 : 叔母さんが来てくれなければ、私たち大変な事になるわ。
王起明 : まあ、荷物を置いて待とうじゃないか。叔母さんは僕たちの身内だよ。まさかほったらかしにはしないさ。
(場内アナウンスで女性の穏やかな声が響いてくる)
郭 燕 : 起明、放送で何か言っているわ。聴いてみて。
王起明 : 聴いてるよ。
郭 燕 : じゃ何を言ってるの?
王起明 : 聴いているんだ、静かにしてくれ。
郭 燕 : ごめんなさい。
王起明 : … Ladies and Gentleman.
郭 燕 : そんなこと、誰でも分かるわよ。
王起明 : あせるなよ。あれこれ言われると、聞きなれた言葉も耳を通り過ぎてしまうよ。第一早口ときてる。
郭 燕 : 早口じゃなくても聴き取れないでしょ。
王起明 : じゃあ君が聞いてみろ。君も英語を勉強したんだろ。
郭 燕 : なんだか海に放り出されたみたい。こんなことしていても時間の無駄よ。
ここになんて書いてあるか分かるの? 漢字なんてないのよ、わからないわよ。
王起明 : ここに日本語があるじゃないか。
郭 燕 : 日本語はわかるの?
王起明 : 当ててみちゃいけないのか?
郭 燕 : そう、じゃあ好きにしたら。
王起明 : 電話の使い方だろ。
郭 燕 : ちょっと、この電話はお金がいるのよ。あなた小銭は持っているの?
準備不足は覚悟していたけれど、こんなことになるなんて
…。私たちいったいどうなるのよ!
(一人の空港案内係がやって来て二人に尋ねる)
案内係 : may I help you? (何かお困りでしょうか?)
郭 燕 : 彼女たぶん …。
王起明 : 手伝ってくれると言ってるみたいだ。あ、あの。
案内係 : okay,sir,where do you want to go? (どちらへ行きますか?)
王起明 : あ、あの。ho … home.
案内係 : I understand,sir,no problem,give me your address? (ご安心ください。住所はおわかりですか?)
郭 燕 : 英語で言ってよ。
王起明 : あわてるな、分かってるよ。これ英語だろ、home.
案内係 : give me your address? (住所はありますか?)
王起明 : I … go home.
(王起明は、この続けざまの外国語に言葉を失い茫然と立ち尽くした。
とはいえ何か良い考えを思いつくはずもなく、ひたすら 「 I go home.」 を繰り返すのみだった。
案内係は辛抱強く、微笑みながら言った)
案内係 : ok,no problem,you have to go through that door,outside and get a taxi,alright?
(わかりました、外へ出て、タクシーに乗ってください)
王起明 : おい 「TAXI」 って何だよ?
郭 燕 : わからないわよ。あなたが聞いてみてよ。
案内係 : yes,taxi,outside,sir,alright? outside,you have to get a taxi,outside,home,yes,okay? bye.
(外でタクシーをつかまえてください、外でタクシーですよ。それで帰宅してください。それでは)
王起明 : ああ、わかった、さよなら、バイバイ。
郭 燕 : 彼女なんて言ったのよ!どうするのよ、あたしたち。
王起明 : 俺にどうして分かるんだよ。いちいち口をはさまないでくれ。
郭 燕 : 何よ。どならなくてもいいでしょ。
王起明 : わかった、わかった。
郭 燕 : あなた北京で英語を勉強したんでしょ。真面目にやってたの?
ここへ来て私に八つ当たりしないでよ。
あなたってば、訳の分からないお友だちと飲み歩いて、パスポートだって、もうぼろぼろじゃないの。
(王起明は背広のポケットから煙草を取り出し口に咥える)
郭 燕 : ちょっと、ここは禁煙よ。
王起明 : なんでだ、アメリカでアメリカの煙草を吸えないのか。
郭 燕 : ほら、あそこに「禁煙」のマークがあるでしょ。
王起明 : 君こそどうして英語が駄目なんだ。朝から晩まで服のことばかり、2か月はデパート巡り。
このスーツ見てみろ、一体何の役に立ったんだ。誰がまともなスーツを着ているんだ。
郭 燕 : 嫌ならば脱げばいいじゃないのよ。
王起明 : 脱ぐとも。ちょうど暑かったんだ。
郭 燕 : なによ、私にばかり当たって。
王起明 : 他の奴にわめいたって聴いてわかるはずがないだろう?
祖 母 : 燕子 …。
郭 燕 : … 叔母さん!!
(郭燕は突然、錯乱したかのように叫び声を上げた。
あたかも三日三晩、海上を彷徨った漂流者が目前に救助船を発見したかのようであった。
二人は驚きと感動のあまり、足が地につかぬような思いで叔母のもとに駆け寄った。
叔父を引き連れた叔母は足早に歩み寄って言う 「ごめんね、車が渋滞して遅くなってしまって」
王起明と郭燕は、慌ただしくお辞儀をし、饒舌を尽くして叔父と叔母に語りかけ、かの東方文明古国の礼儀作法を何度も繰り返した。
叔父は明らかに叔母より20歳ほど年長で、話をする時の広東訛りがとても重く感じられた。
「ニューヨークへようこそ。道中大変だったろう?」
王起明が慌てて言った 「いえいえ、そんなに疲れてませんよ!」
「叔父さん叔母さん感謝します」 郭燕も続いて礼を言う。
「それでは、まいりましょうか」 叔母は微笑みながら彼らに言った … )