7月1日
地獄変
1969年(昭和44年)
邦画名作選
春夏秋冬
平安時代、天下一の腕前だが、頑迷で高慢な良秀という絵師がいた。
良秀は権勢を誇る堀川の大殿から屏風に地獄絵を描くように命じられる。
が、実際に見たものしか描けないと言う。
良秀は地獄を描くために、あることを望むが…。
「宇治拾遺物語」を題材にした芥川龍之介の短編小説を名匠・豊田四郎が映画化。
自らの芸術のために実の娘を焼き殺してしまう天才絵師の狂気を描いた衝撃作。
平安の都を舞台に、時の権力者と反骨心に満ちた宮仕えの絵師が壮絶な対立を見せる。
文芸映画で評価の高い豊田四郎だが、本作品では迫力ある人物造形に力を入れている。
錦之助・仲代両者の大時代的な演技合戦は異様な迫力を持ち、観る者は圧倒される。
また絵師良秀の如何なる犠牲も厭わない芸術至上主義が表現された作品とされるが、
地獄絵の完成後、良秀の自害によって、芸術性と人間性は、辛うじて両立している。
芥川の原作「地獄変」は第三者によって事件を語らせるという形式がとられている。
物語の結末、良秀の自害の理由は、語り手によって後日譚の形で明かされる。
一人娘の死に、恐らく安閉として生きながらヘるのに堪へなかったのでございませう…。
狂気の天才絵師もやはり物哀しい人間の一人だったのであろうと、語り手は結んでいる。
製作 東宝
監督 豊田四郎
配役
堀川の大殿
中村錦之介
娘良香
内藤洋子
絵師良秀
仲代達矢
弟子弘見
大出俊