赤ひげ 1965年(昭和40年) 邦画名作選
長崎で最新の西洋医学を修めた青年医師・保本登は、幕府の典医への道が約束されていた。
だが不潔で見すぼらしい養生所の見習いを命じられたことが気に入らず、ふて腐れていた。
プライドが傷ついた彼は「赤ひげ」と呼ばれる老医師にも反発を覚え、徹底的に反抗する。
あるとき、狂女の手にかかって危うく殺されかけたところ、赤ひげに助けられたことから、
わだかまりが少しずつ解けていく…。
山本周五郎原作「赤ひげ診療譚」を黒澤明が映画化したもの。
長崎帰りのエリート青年医師・保本と貧乏人に尽くす養生所の医師・赤ひげの物語。
主人公の人間的成長を原作以上に力点をおく黒澤は、少女おとよの物語を自ら創作した。
保本は、吉原の女郎屋で出会った少女おとよを養生所に引き取り世話をすることになる。
女郎屋で虐待され、いじけて心を閉ざした少女おとよは、かつての保本の姿であり、
彼女を治療することによって、自らの心の傷も癒されてゆく。
「治療とは病人の体だけでなく心を癒すことだ」赤ひげは若い医師の保本に教え諭す。
やがて自らの天命を悟った保本は、富も名声も捨て、赤ひげの道を継ごうと決意する。
青年医師・保本を演じた加山雄三は、演技で涙が流せず、黒澤監督が「泣けるまで待とう」
と撮影をやめた思い出を「若大将の履歴書」のなかで述懐している。
「赤ひげ」に出演するまで、加山は、それまで俳優を続けようか辞めようか悩んでいたが、
本作の出演をきっかけに、生涯俳優の道を歩もうと決意したという。
製作 東宝
監督 黒澤明