新しい背広    1957年(昭和32年)       邦画名作選

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隆太郎(小林桂樹)は、戦争で両親を亡くしたあと、サラリーマンとして
働きながら、弟の泰助(久保明)の面倒を見ている。

彼には、恋人の綾子(八千草薫)がいるが、弟が高校を卒業して働くように
なるまでは、兄としての責任があるので結婚できない。

ようやく弟も高校三年になって、来年あたりは結婚のめどがたつ。

だが勉強のよく出来る弟は、無理とは知りつつ大学に行きたいと言う。

生活は楽ではない。隆太郎が着ている背広はぼろぼろだが、新しい背広を
買う余裕もない。

弟が大学に行ったら、結婚をさらに四年延ばさなくてはならない。
兄の隆太郎は悩むのだった。



隆太郎(小林)と綾子(八千草)は、同じ建築事務所で働いているのだが、
女性は結婚すると、会社を退職して家庭に入るのが当然という時代であった。

さらに綾子は、母親とつましく暮らしており、母子ともに面倒を見ることになる
隆太郎は、いまひとつ結婚に踏み切れないのだった。


高度成長期に入る前の、戦後復興期の日本の夜明け前。この時期の映画を見ていると、
愛し合っていても、貧しい家の事情で結婚できない恋人たちがたくさんでてくる。


悩みに悩んだ隆太郎は、思いつめて、それを綾子に打ち明けると、彼女は励ますように
言う。「あたし、待つわ、四年でも、五年でも…」

隆太郎は弟に「大学に行け」と言う。すると弟は、バイトしながら夜学へ通うと言う。


真剣で健気に生きる当時の若者たちの姿を描いた心あたたまる一篇である。




 


  製作  東宝

  監督  筧正典

  配役    斎藤隆太郎 小林桂樹 叔母・かね 水の也清美
      弟・泰助   久保明        吉崎綾子   八千草薫 
      叔父・保昌 北沢彪 母・常子 夏川静江

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