血煙高田の馬場   1937年(昭和12年)     邦画名作選
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若侍の安兵衛(阪東妻三郎)は気ままな浪人暮らし。

喧嘩の仲裁をしては、せしめた金で酒を飲むという毎日だ。

そんな安兵衛を苦々しく思う伯父・萱野六郎左衛門(香川良介)は説教を垂れる。

だが安兵衛は、真面目に取り合おうとしない。

ある日、六郎左衛門が不良侍たちに因縁をつけられ、決闘をすることになってしまう。

場所は高田馬場だという。いつものように酒を食らって家に戻ってきた安兵衛、

この知らせを聞いて吃驚仰天。刀をひっ掴み、高田馬場へと走る、走る、走る!




本作は、監督二人と阪妻が、一週間足らずで制作完成した正月作品。

見どころは、八丁堀の長屋から決闘の高田の馬場までの韋駄天走り。
ひたすら走りに走って走りまくる。その躍動感と緩急に富んだ演出が素晴らしい。


新発田藩の藩士・中山安兵衛(阪東妻三郎)は、掛け替えの無い友人を失う。

その友人は、若殿の寒鮒釣り不漁の不満から、手討ちになってしまったのだ。
恨みを晴らすため、主君に媚びへつらう奸臣三人を懲らしめ、自ら藩を飛び出す。

浪人となって江戸に出たものの、新発田藩のお尋ね者の身となってしまった。


本作「決闘高田の馬場」は、権力に反逆の一矢を放った血気盛んな中山安兵衛が
唯一の身内である伯父に助太刀して名を挙げる話。

この中山安兵衛の大活躍は、講談では「18人斬り」などと華を添えられている。


日頃の鬱憤を酒や喧嘩で晴らしていたが、遂に天下に事あって一世一代の活躍をして
世間の鼻を明かすという、現代のサラリーマンの願望に通ずるものがあった。

観客もまた、画面の阪妻と同様に一喜一憂した上、大いに溜飲を下げたのである。


 
 
 製作   日活

  監督   マキノ正博、稲垣浩  原作 牧陶三

  配役    中山安兵衛 阪東妻三郎 大工の熊公 市川百々之助
      萱野六郎左衛門 香川良介 熊公女房・お才 原駒子
      堀部弥兵衛 藤川三之祐 八卦屋の天眼 伊庭駿三郎
      弥兵衛の娘・お妙 大倉千代子 講釈師・楽々亭貞山 志村喬

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