生きている画像 1948年(昭和23年) 邦画名作選
洋画家の大家である瓢人先生(大河内伝次郎)には、多種多様な門下生たちがいた。
南原(藤田進)は、才能はあるのだが、プライドの高さが進歩の妨げとなっている。
一方、田西(笠智衆)は、展覧会で十四回も落選するなど、不遇の日々を過ごしている。
ある日、瓢人先生のもとに田西が現れ、モデルの美砂子と結婚したいと言い出した。
だが瓢人先生は、田西の結婚に反対し、結婚すれば破門とまで言い切るのであった。
シナリオ作家・八田尚之の小説「瓢人先生」を自身が脚色し、千葉泰樹が監督した人情劇。
画家瓢人先生を飄々と演じる大河内と、貧乏画家を演じる笠智衆との初の共演作であり、
これに花井蘭子、藤田進、古川緑波、河村黎吉らが絡む。
物語は、一人の売れない中年の画家(笠智衆)が、薄幸なモデルの妻(花井蘭子)と
一筋に愛し合いながら、画家として精進を続けるという純愛ストーリーである。
不幸にも妻は、病気で亡くなってしまうが、永年展覧会で落選ばかりしていた画家が
彼女をモデルにした絵で、はじめて入選を果たすのである。
生涯、地味な脇役だった笠智衆が、この作品では珍しく主役で、彼の一番の持ち味である
実直な誠実さが遺憾なく発揮されている。
また彼の師匠役である大河内伝次郎が、酒を愛し、弟子を愛して、日々飄然と生きる
画壇の大家を、枯淡の風格をもって演じている。
製作 新東宝 配給 東宝
監督 千葉泰樹 原作 八田尚之