維新の京洛 竜の巻 虎の巻   1928年(昭和3年)   邦画名作選
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血生臭い風が吹き荒れる幕末の京洛。近藤勇(大河内伝次郎)率いる新選組は、勤皇志士に
猛烈な攻撃を加え、桂小五郎(河部五郎)、井上聞多等は幾度も死地に陥れられた。


新選組に急襲され、多くの志士が討ち取られた池田屋事件で、辛くも難を逃れた桂小五郎は、
坂本龍馬(鳥羽陽之助)の意に従い、薩摩の西郷吉之助に会い、薩長連合の必要を説得する。

西郷は承諾し、薩長両藩の同盟が成立、ここに倒幕への流れが一気に加速した。

だが、坂本龍馬は、大政奉還を前にして、同志の中岡慎太郎と共に近江屋で暗殺される。

やがて、盛時は三百人を数えた新選組にも凋落の秋が訪れる。



幕末の勤皇派と新選組の闘いを、桂小五郎と近藤勇を軸に描いた池田富保監督の超大作。

桂小五郎役は、河部五郎が前作「地雷火組」に引き続き演じ、近藤勇役は、大河内伝次郎が演じた。

大河内は当初、坂本龍馬に内定していたのだが、人気を受けて、最終的に近藤勇に決まった。

近藤勇は反革命の手先だから、本来は悪役なのだが、前年から大仏次郎の「鞍馬天狗」が始まり、
天狗の好敵手として、器の大きい堂々たる剣豪というイメージが定着したのである。


本作は、昭和天皇の即位大典(昭和3年11月10日)を記念して制作された作品である。

実際、大正末期から昭和初年にかけて、幕末を題材とした映画が量産されるようになった。

主人公は、坂本龍馬や桂小五郎など歴史上の人物のほかに、鞍馬天狗、月形半平太、貝殻一平など、
勤皇の志士が主役となっている作品が、圧倒的に多いことが特長のひとつとなっている。


「菊は栄える、葵は枯れる」という幕末の俗謡がある。薩長連合で、両藩はともに天皇中心の
「皇国」のために尽力する、という大きな方向性のもとに同盟を結んだのであった。

大政奉還や王政復古という諸改革が実現したのも、彼ら志士たちの活躍があってこそだった。

こうして以降、勤皇の志士が、時代劇ヒーローのスタンダードとして定着したのである。



 
 
 
  製作   日活

  監督   池田富保

  配役    岩倉具視 山本嘉一 西郷吉之助 浅岡信夫
      桂小五郎 河部五郎 近藤勇 大河内伝次郎
      井上聞多 広瀬恒美 中岡慎太郎 久米譲
      坂本龍馬 鳥羽陽之助 芸妓幾松 酒井米子

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