一心太助 天下の一大事 1958年(昭和33年) 邦画名作選
魚河岸の魚売り一心太助は、ひょんなことから自殺しようとしている男を助ける。
この男が言うには、大久保彦左衛門に、大事な許嫁を奪われて返してもらえない。
こうなったら、もう死ぬしかない、という話なのである。
ビックリ仰天、太助は、その幸吉という男の手を掴んで、彦左邸へ駈けつけた。
が、よくよく聞くと、それは隣家に住む旗本・丹波守の間違いだった。
御城改築奉行となった丹波守は、その役目をカサに、何かと悪い噂が絶えない人物だ。
御城改築に曲事ありと考えた彦左衛門は、さっそく改築現場に乗り込むのだが…。
ご存じ一心太助が、丹波守という悪旗本に許嫁を奪われた男を救い、大久保彦左衛門とともに
その悪旗本をやっつけるというお江戸痛快ストーリーである。
一本気で威勢のいい太助を演じる錦之助は、地でやっているようないきいきとした魅力を発散。
品格のある将軍家光との二役だが、見事に演じ分け、芸達者な面を覗かせる。
シリーズを通して沢島忠が監督しており、その現代感覚あふれたスピーディーなタッチが、
太助の粋でいなせな江戸っ子気質とうまく噛み合っている。
また本作に風格を与えているのは、彦左衛門に扮した月形龍之介の存在感のある演技だろう。
しゃがれ声と鋭い眼光で、古武士の心意気を淡々と語るシーンは、渋さも渋し、天下一品である。
製作 東映
監督 沢島忠