金の切れ目が縁の切れ目とばかり男をとっかえひっかえする祗園の芸者・君蝶。
その妹・妙子は、京都市役所の観光課に勤める地味でおとなしい娘である。
妙子には職場の同僚である恋人がいた。祗園で有名な菊亭の一人息子の孝次だった。
しかし、孝次の母親から身分が違うと結婚を許してもらえずにいた。
妹には幸せになって欲しい、と体を張る決心をする君蝶だったが…。
京都の花柳界を舞台に、したたかに生き抜く芸者の姿を、花街の風俗を交えながら描く。
妖艶な芸者・君蝶を見事に演じきった京マチ子を、一躍大スターに押し上げた傑作。
「どうせウチら、お金で結ばれた仲どすさかい。こちらかて、だいじな体を提供してまっせ」
本作は、売春防止法が施行される前の作品であり、こうした君蝶の姿勢は法的にもかなっている。
しかし法的にかなうからといって、君蝶の態度は道義的にはけっして褒められたものではない。
男を手玉に取り、絞り尽くすやり方に、思い余った客の一人が出刃包丁を振りかざして
彼女を追い廻し、ついに踏切り前で刺した。君蝶は辛くも一命を取り留める。
やっと決心して恋人と東京へ行くという妹を、君蝶は優しく励まし、病床から見送る。
そして自分も、もうこんな生活とは縁切りだとふと呟く。
吹っ切れたその言葉には、自らも新たな一歩を踏み出そうとする決意が込められていた。
製作 大映
監督 吉村公三郎