地雷火組 (じらいかぐみ) 1927年(昭和2年) 邦画名作選 |
時あたかも動乱の幕末、絃歌さんざめく京洛の夜。
三条大橋に立つ見目麗しき女人は、勤皇祇園の芸妓・幾松(川上弥生)であった。
彼女は丁度、大津の商人・相模屋喜之助(尾上多見太郎)を送って来たところである。
「幾松、これをおまえにやるから受け取ってくれ」
「まあ、こんなに沢山のお金、これは何か…」
「私も勤皇方に尽くしたいのだ。そなたの好きな人に渡しておくれ」
「有難うございます。私が代わって御礼を申し上げます」
喜ぶ幾松が、金子を受け取った刹那、その手首をぐいっと掴んだ喜之助。
「御用だ!幾松。相模屋とは仮の名前、俺は目明し喜之助だ」
「あッ」と驚く幾松。
「桂をはじめ勤皇志士の在り処を残らず詮議してくれるわ!」
幾松が引き立てられてゆこうとする危急の時、突如現れた怪漢。
「この女は俺が貰ってゆく。邪魔立てすると為にならんぞ」
「貴様は何者だ!」
「俺か。長州藩の左橋与四郎だ。桂とともに龍虎と呼ばれた命知らずだ!」
颯爽たる大河内伝次郎の登場に、館内の大向こうから一斉に歓声と拍手が沸き上がる。
ここは封切り初日の浅草観音劇場。既に大入り満員で身動き出来ない人気であった。
1927年、大衆雑誌「講談倶楽部」に連載された大仏次郎の同名時代小説の映画化。
物語は、幕末の勤皇派と佐幕派の闘いを、桂小五郎とその同志・左橋与四郎を軸に
描いたもので、ラストは新選組との乱闘で、左橋与四郎は壮絶な最期を遂げる。
劇中に「地雷火」という新兵器が登場するが、これは、導火線をつけた火薬入りの
木箱を地中に埋めたもので、現代の地雷に当たる。
また皇室のために地雷火となって云々というセリフがあるように、比喩的に地雷火の
ような働きをめざす志士たちの地下組織「地雷火組」をも意味している。
なお残念ながら、この作品はフィルムが散逸し、現在は観ることができなくなっている。
製作 日活
監督 池田富保 原作 大仏次郎
配役 | 桂小五郎 | 河部五郎 | 城戸重蔵 | 喜多次郎 | |||||||||
左橋与四郎 | 大河内伝次郎 | 城戸の娘・夏絵 | 桜木梅子 | ||||||||||
芸妓・幾松 | 川上弥生 | 芸妓・松菊 | 村瀬光子 | ||||||||||
天人お吉 | 酒井米子 | 目明し喜之助 | 尾上多見太郎 |