実録忠臣蔵 天の巻 地の巻 人の巻 1926年(大正15年) 邦画名作選 |
元禄十四年、江戸城は松の廊下。
勅使饗応の役を申し渡された赤穂の浅野内匠頭は、吉良上野介(山本嘉一)から
礼儀作法の教えを乞うたが嘲笑され、殿中にもかかわらず刃傷に及ぶ。
浅野は即刻切腹。その悲報は赤穂の家老・大石内蔵助(尾上松之助)の元に届く。
大石は、やむなく城を明け渡し、自身は江戸に上る。
やがて名を変え、職を変えて待機していた赤穂の浪人たちは、大石の元に集結。
彼らは死に装束に身を固め、雪の積もる中、吉良邸に討ち入るのであった。
実録忠臣蔵の「実録」とは、実際の史実に基づいた作品という意味ではない。
賄賂政治が日常化していた元禄太平の時代に、それが発端となり刃傷事件が起こった、
という客観的な視点に立って、この物語は描かれている。
すなわち吉良が浅野に賄賂を要求して、様々な迫害をした事が原因となった事件なのに
幕府が殆ど裁判らしい裁判もしないで、一方的に浅野を処分して済ませてしまった。
そうした納得し難い裁きによって、藩を潰されるのは武士としての恥辱であり、
命がけの異議申し立てをしなければ、武士の意地が立たないという新解釈である。
本作は、当時の国民的スター・尾上松之助が、幕府から受けた屈辱に歯をくいしばり、
じっと耐える大石内蔵助を重厚に演じ、以降の忠臣蔵映画の規範を示した作品である。
尾上松之助は、日本映画の草創期に17年間に渡り主役を演じ、生涯で約千本の映画に出演した。
目玉をギョロリと剥いて見栄を切る演技から「目玉の松っちゃん」という愛称で親しまれた。
主演作は、大石内蔵助や水戸黄門、清水次郎長や国定忠治、宮本武蔵や鞍馬天狗、猿飛佐助など
ありとあらゆる役を演じたが、1926年9月、心不全で死去。本作は最後の忠臣蔵出演となった。
製作 日活
監督 池田富保
配役 | 大石内蔵助 | 尾上松之助 | 浅野内匠頭 | 桂武男 | |||||||||
妻・りく | 中村栄子 | 瑶泉院 | 桜木梅子 | ||||||||||
大石主税 | 市川市丸 | 吉良上野介 | 山本嘉一 | ||||||||||
堀部安兵衛 | 大谷鬼若 | 村上喜剣 | 河部五郎 |