十三人の刺客 1963年(昭和38年) 邦画名作選
弘化元年(1844年)十二代将軍徳川家慶の治世。
暴虐な明石藩主・松平斉韶に江戸幕府も頭を悩ましていた。
しかし斉韶は将軍の弟君である為に表立った処分は難しい。
そこで幕府は極秘に、旗本・島田新左衛門に斉韶暗殺を命じる。
こうして島田新左衛門を筆頭に、十三人の刺客が極秘裏に集められた。
しかし暗殺計画を察知した明石藩の軍師・鬼頭半兵衛が立ちはだかる…。
木曽山中の宿場町を舞台に、明石五十万石の藩主を狙う十三人の刺客の姿を描いた傑作娯楽時代劇。
本作は、時代劇全盛期の最後に咲いた徒花ともいうべき集団時代劇の傑作と位置づけられている。
暗殺部隊のメンバーを、一人また一人と集めて行く過程は黒澤明の「七人の侍」を思い起こさせる。
しかし、七人の侍たちが、自主的な意思で、誇りを持って戦ったのに対して、十三人の侍たちは、
政治抗争に利用される捨て駒でしかなかった所に、大義に生きる武士道の無常感が感じられる。
新左衛門が「貴様たちの命、この新左が使い捨てる」と宣言する場面に、本作のテーマが見て取れる。
泰平の世で自らの死に場所を失っていた侍たちも、ついに廻ってきた天命に武者震いを覚えるのだった。
木曽山中の宿場における十三人対五十三騎の壮絶な戦闘シーンは三十分に及び、時代劇映画史上に
燦然と輝く名クライマックスとなった。
製作 東映
監督 工藤栄一