風の女王 1938年(昭和13年) 邦画名作選
化粧品会社に勤める由紀子は、英文タイピスト嬢として生き生きと働いている。
妻子ある上司との恋がかなわないとわかると、きっぱりあきらめ仕事に生きる。
やがてパリ駐在を命じられ、横浜から船でフランスへと旅立っていった。
一方、妹の布枝は、ピアノが好きで、将来はピアニストになりたいと夢見ている。
男女交際にも積極的で、姉の上司をデートに誘ったりする。
上司が「もう九時半だ、遅いから帰ろう」と言うのも聞き入れず「まだ宵の口よ、
これから銀座に行きましょう」などと青春を謳歌するのであった。
自立志向の強い、おしゃれなモダンガールが描かれている作品である。
モデルとなっている銀座の化粧品会社は資生堂であろうか。
かなわぬ恋を早々にあきらめ、仕事に生きようとする姉と、そこそこに仕事をして
趣味や今の楽しみに興じる妹という、姉と妹が対称的な女性として描かれている。
戦前のトレンディドラマであるが、この時代は映画が流行りの最先端を牽引していたのである。
姉妹二人に翻弄される上司役・佐野周二の優柔不断なダメ男ぶりも見どころのひとつである。
製作 松竹
監督 佐々木康