袈裟と盛遠(けさともりとお)  1939年(昭和14年)   邦画名作選
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盛遠(嵐寛寿郎)は、平清盛に仕える武士である。

戦乱の中で彼は、美女・袈裟(轟夕起子)に出会う。

袈裟が人妻と知っても諦めきれない盛遠は「夫と縁を切って自分の妻になれ」と迫る。

困り果てた袈裟は「夫を殺して下さい。そうすれば身を任せてもよい」と約束する。



歴史上有名な袈裟御前の物語で、彼女に惚れた武士・盛遠と袈裟の夫(江川宇礼雄)との
三角関係を扱った平安期の説話である。

物語の結末は、袈裟が、二人の男に誠を尽くすため、故意に夫の蚊帳長に寝ていて、
盛遠に殺されてしまうという女心の微妙な綾が描かれる。


嵐寛寿郎と轟夕起子の初顔合わせの作品だが、袈裟御前に扮した轟夕起子の演技が目を引く。
夫を裏切ることなく、すべてを胸に秘めてこの世を去る貞淑な妻を見事に演じ切っていた。

なお、1954年(昭和29年)カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した衣笠貞之助の「地獄門」は、
同じく袈裟と盛遠の物語を題材にした菊池寛の戯曲「袈裟の良人」を原作としている。



 
 
 製作   日活

  監督   マキノ正博、稲垣浩

  配役    盛遠 嵐寛寿郎 小松原兼継 田村邦男
      袈裟 轟夕起子 嵯峨八郎 浅野象二郎
      その母・衣川 常盤操子 梶原高綱 小池柳星
      渡辺左衛門尉亘 江川宇礼雄 山崎景季 瀬戸一司

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