飢餓海峡 1965年(昭和40年) 邦画名作選
昭和22年、青函連絡船沈没事故と北海道岩内での大規模火災が同時に起きる。
火災は質屋の店主を殺害し、金品を奪った犯人による放火と判明。
そして転覆した連絡船からは、二人の身元不明死体が見つかった。
それは質屋に押し入った三人組強盗のうちの二人であることが分かる。
老刑事・弓坂は、事件の夜に姿を消したもう一人の男を追って下北半島へ赴く。
水上勉の同名推理小説を内田吐夢が映画化したもの。
人の内に潜む心の闇を炙り出した重厚な人間ドラマ。
殺人強盗で逃亡中の男・犬飼多吉は、一夜を共にした娼婦・八重に、大金を渡して立ち去る。
まっとうな金でないと直感するが、八重は多吉を生涯の恩人と思い、口外しないと心に誓う。
やがて多吉は、実業家として成功するが、自分の過去を知る女・八重との再会に動揺する。
忌まわしい過去が暴かれるのではないかと早合点した多吉は、発作的に八重の首を絞める。
八重には脅迫する気持はみじんもなく、ただ純粋に感謝の念を、多吉に伝えたかったのだ。
過去のしがらみから逃れられない多吉の、哀しさ愚かさから生まれた人間不信の悲劇である。
製作 東映
監督 内田吐夢 原作 水上勉