京洛の舞   1942年(昭和17年)     邦画名作選
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幕末の京洛。熱き勤皇の志士たちは、幕府打倒を実現すべく、喧々諤々の議論を
繰り広げていた。

そんな中に土佐の出雲路源三郎(坂東好太郎)、薩摩の田中新兵衛(阪東寿三郎)
の顔もあった。


奔走する志士たちの密談場所である祇園の料亭に、お千加(高峰三枝子)という
芸妓がいた。源三郎とお千加は、互いに深い想いを寄せ合う仲だった。


一方、攘夷派の志士たちにとって、有力な頼れる人物として、公家の姉小路公共卿
(阪東寿三郎)がいた。


ある夜、開国論の急先鋒・勝麟太郎(薄田研二)と姉小路卿が密かに会見するという
報がもたらされる。

「勝斬るべし」と、志士たちは会見場所を襲おうとするも、姉小路卿になだめられ
引き返す。しかし、この事件がきっかけで、志士たちの間に亀裂が生じはじめる…。



本作は、野村浩将と野田高梧の「愛染かつら」コンビによる痛快娯楽恋愛時代劇。


幕末の京洛を舞台に、勤皇の志士たちの壮絶な闘いを、彼らと祇園の芸妓たちとの
恋模様を織り交ぜて描いたものである。

とりわけ、芸妓・お千加に扮した高峰三枝子が一途な恋を純情可憐に演じている。


だが本作は、公開後の映画評で「軟弱を極めた愚かな映画」(朝日新聞、12月18日)
と酷評されてしまった。

一方、同年公開の「ハワイ・マレー沖海戦」「空の神兵」「決戦の大空へ 1943年」
などは、いずれも大絶賛されている。


何のことは無い、この朝日新聞の評論家(津村秀夫)は、戦闘的で勇ましい国策映画
のみを激賞し、その他の娯楽映画や恋愛映画は、一律に厳しく貶しているのだ。


時局柄、戦意高揚映画が推奨されるのはやむを得ないが、これほどまでに恥も外聞も
なく、大本営の御先棒を担ぐ映画評論家が存在したことは、記憶しておいて良い。



 
   

 
  製作   松竹

  監督   野村浩将

  配役    田中新兵衛 阪東寿三郎 女川惣之助 日守新一
      姉小路公共卿 阪東寿三郎 坂本龍馬 月形龍之介
      出雲路源三郎 坂東好太郎 お千加 高峰三枝子
      岡田以蔵 河村黎吉 勝麟太郎 薄田研二
      松平容保    徳大寺伸            近藤勇    尾上多見太郎 

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