また逢ふ日まで 1932年(昭和7年) 邦画名作選 |
裕福な男(岡譲二)は、娼婦の女(岡田嘉子)を愛したために、父親から勘当される。
男は出征する事になったが、その事を父や妹には告げずに戦地へ向かおうとしていた。
親不孝者のまま出征するほうが、戦死しても家族の悲しみは少ないだろうと思ったのだ。
恋人の娼婦は、彼の悲痛な思いを知って、家族に出征のことを知らせた。
父と妹は、急いで駅まで駆けつけた。しかし汽車は出てしまい、間に合わなかった。
父親は息子を許すという事もできなかった。
父と妹は、永い間去って行く列車を見送っていた。
その陰で、もっと永く見送っていた女がいたのを誰も知らなかった。
昭和7年(1932年)といえば、上海事変に満州国建国、国内では、財界要人の暗殺や、
陸海軍将校による犬養首相暗殺事件と慌ただしかった。
そんな中、一枚の召集令状を巡って、複雑に交錯する人間模様を描き出した本作は、
その後の混迷する政局や世相を見透かしたような作品であった。
それゆえ登場人物たちの役名は、ただの女と男になっている。
それはこの物語が、特定の人間の話ではなく、庶民一般の男と女に共通のものだと
いうことを表している。
ヒロインを演じた岡田嘉子は、当時はスキャンダル女優などと呼ばれていたが、
女の最盛期で、こぼれるような美しさがあった。
岡譲二は、前年の1931年(昭和6年)松竹に入社。鈴木伝明、岡田時彦ら二枚目俳優
が退社した後の入社であり、一躍松竹蒲田を背負う主演級スターとなった。
製作 松竹
監督 小津安二郎
配役 | 女 | 岡田嘉子 | 女中 | 飯田蝶子 | |||||||||
男 | 岡譲二 | 女の友達 | 伊達里子 | ||||||||||
父 | 奈良真養 | 女の友達 | 吉川満子 | ||||||||||
妹 | 川崎弘子 |