乱れ雲    1967年(昭和42年)       邦画名作選

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由美子(司葉子)は、夫を交通事故で失ってしまう。

しかし車を運転してした史郎(加山雄三)は、不慮の事故ということで無罪となる。

良心の呵責から償いを続ける史郎だったが、いつしか史郎の思いは愛情に変わっていく。

そんな史郎を、由美子は激しく恨み、拒絶するのだった…。



夫を交通事故で亡くした若い美貌の人妻と、その加害者である青年との純愛を描いた傑作。

青年への憎しみが次第に激しい愛へと転じる過程が、実にスリリングな描写で表現される。

成瀬映画では、登場人物の心の反映を、状況描写によって示唆する手法が多用される。


十和田湖で雨が降り出し、二人がボートを降りて、近くの宿屋で雨宿りするシーンがある。

由美子が、熱を出した史郎を看病するのだが、惹かれあう二人の揺れ動く心を表すように、
部屋の外で、落雷が鳴り、雨が激しく降り続けるというシーンが効果的に使われている。


物語の終盤で発生する心中未遂事件、鳴り続ける電車の踏切音、タクシーの運転手の視線、
無残な交通事故現場、これらはすべて主人公二人の動揺する心の動きを描写している。

自動車事故をきっかけに、二人は出会い、憎しみや罪の意識は愛情へと変わってゆくのだが、
やはり自動車事故を目撃することによって、二人の愛は破局を迎えてしまうのである。




  製作  東宝

  監督  成瀬巳喜男

  配役    三島史郎 加山雄三 文子 草笛光子 林田勇三 加東大介
      江田由美子 司葉子 石川 藤木悠 武内常務 中村伸郎
      江田宏 土屋嘉男 由美子の義姉 森光子 淳子 浜美枝

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